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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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後姿

そうこうしているうちに、ヘリコプターが上空まで来て、すぐ近くに着陸した。

それは軍用機ではなく民間のレンタル会社の輸送ヘリコプターだった。こんな所に民間機が飛ぶなんて危ないし、同時に珍しかった。

後部ハッチが開き2人が降りてきた。

一人はアジア系の顔をして、服の腕に日の丸のマークが付いていた。もう一人はヨーロッパ系の顔をして、服の腕に青のダビデの星、ユダヤのマークでありイスラエル国旗が付いていた。

「ESだ」

アジア系の男がESに声をかけた。

「早くヘリに乗れ」

ESは振り返り、アジア系の男を見た。知っている顔のようだった。

「負傷者がいる。先に手当てをする必要がある」

彼は私をチラッと見た。

「それは我々の担当外だ」

「でも、やけどがひどい。このままだと、死んでしまう」

「1時間前の緊急通信で伝えたが、ここは攻撃対象だ。次のミサイル攻撃まで時間がない。すぐに離陸する」

「それは受信した。でも、停戦になったのに、なぜ攻撃するんだ?」

「それはお前の威力が大きすぎたからだ。予想以上にアゼルバイジャンが善戦してしまった。交渉締結前に紛争を終わらせる訳にはいかない。スポンサーは紛争の長期化を望んでいるから、お前の出番はもう無い。今後は効率の悪い旧来の兵器で紛争を長引かせる方針になって、偽旗作戦でアルメニアからここは攻撃される。表向きはアゼルバイジャンの停戦違反として発表されるが」

ヨーロッパ系の男が会話に割り込んだ。

「早く離陸しよう。こんなロボットに話してもきりがない。こうすれば、その女の手当ての必要はなくなる」

それから軽機関銃を構え、私を狙った。

彼らは中立国のはずで、敵でもないのに、なぜ私が狙われる?

今の私は足が思うように動かないから逃げられないし、この距離なら外れることはない。

彼はためらいもなく、あっさりと引き金を引いた。

タタタターン

軽機関銃の音が響き、今度こそもう終わりだと思った。

でも、なんともない。

恐る恐る目を開けると、私の前にESが立ち、私の代わりに弾を受けていた。彼は特に被害を受けていなかった。

そっか、彼は銃の弾くらいなら、大丈夫なんだ。

「Mr.山本。こいつは人間に反抗した。これでは兵器として使えない」

彼はさらにESを撃とうと銃を構えたが、山本と呼ばれた男が銃を押さえた。

「今回の現場検証でどこまで人間に近づくか調べていたが、人に情を持ってしまったか」

「どうする?銃では歯が立たない」

「問題ない」

山本と呼ばれた男はポケットからリモコンのようなものを取り出すと、何かキーを押した。

するとESが急に動きを止め、完全に静止してしまった。

「リモートモードにしたから、もう安全だ。最初からこうすれば良かった」

それからESの方を向き命令した。

「ヘリに乗れ」

ESは再び動き出し、素直に一直線にヘリに向かって、一度も振り向きもせず歩きだした。ヘリは3人を収容すると、離陸して飛び去った。

それがESを見た最後だった。

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