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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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真の原因

「あなたは友達なんかじゃない。敵よ」

腰の銃を抜こうとホルスターを探したけど、火に包まれた時にベルトが燃えてどこかに落としたらしい。

「この戦争は、君が思っているようなものではないんだ」

遠くでヘリコプターの音が聞こえた。

「僕の会社のスポンサーはBTDパイプラインに出資している。アゼルバイジャンのバクー、ジョージアのトリビシ、トルコのハタイ。この3都市を結ぶパイプライン。ちょうど今、パイプライン使用料の更新交渉中なんだ。交渉を有利に進めるために、アルメニアとアゼルバイジャン双方に別々に援助して、お互いに相手に分からないように故意に民族紛争を煽り立てた。同時に僕のEMPの実験をアゼルバイジャンの支援として行った。つまり、君の言った経済格差などは下地であって、この戦争の目的は戦争すること自身なんだ。自然発生的にこの地域で勃発したのではなくて、第3国が介入して紛争の原因を作ったんだ」

「そんなことは、私には関係ないわ」

銃が無いから、探しに行こうと立ち上がろうとしたけど、右足がやけどで痛くてうまく立てなかった。バランスを崩し倒れて、喉もやけどをして息が苦しく、同時にごほごほと咳き込んだ。

「大丈夫?」

「触らないで」

「でも、早く医務室に行かないと」

改めて見てみると、私の右半分の皮膚は完全に焼けただれ、皮膚が服に癒着して一体化していた。

どうりで動くと痛い訳だ。

彼が再び私を持ち上げようとした。

敵だと分かっていて、医務室に運んでもらうなんて、そんな惨めったらしいことは出来なかった。

私は、動ける左手足で精一杯抵抗した。

「放して」

「嫌だ、離さない。医務室に連れてくまでは」

そう言われると、余計に苦しい。敵なら悪に徹して欲しい。そうすれば、私も迷いなく恨むことが出来る。

私は敵の新兵器を助けてしまった。本来なら自爆してバラバラになるはずのものだったのに、私が助けたために、今ここに存在し続けている。

だから、私の手で元に戻す、つまり破壊してプラスマイナスゼロにする義務があると思った。

「あなたを殺す、いや壊す。復讐の対象だわ」

自分を納得させる目的も含めて、あえてきつい言葉を口にした。

でも、彼は私を気遣ってなかなか放してくれなかった。

私達は押し問答を続けて、私がバタバタ暴れるから、彼は私を抱えられずにいた。

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