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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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九死に一生

ガバッ

突然、覆いかぶさっていた天井板と梁が持ち上げられ、私を包む炎の向こうに、日の光をバックに立ちはだかる人影が見えた。ESだった。

彼は自分の上着を脱ぐと、私に巻きつけて、火を消そうとした。でも、灯油はまだまだ流れてくるから、火は消えそうもない。

私の足首をはさんでいたブロックの塊を、彼は持ち上げると、横に投げて、火のついたままの私を抱きかかえた。

それから颯爽と瓦礫の山の上をジャンプして、今にも崩れそうな管理棟から離れた。そのジャンプ力は凄まじく、軽々と5mくらいの障害物を飛び越した。

彼は飛びながら上着で私の服の燃えている部分を包んで、火を消した。

再び空に白い筋が見えた。3発目のミサイルだった。それは管理棟の中の基地の指令部に着弾して、管理棟は跡形もなく完全に吹き飛んだ。

あのまま足を挟まれたままだったら、焼け死ぬ前に今頃は粉々に吹き飛んでいた。

気管もやけどを負って、呼吸が苦しかった。ぼんやりとした意識の中でESの顔を見上げた。

こんなに高くジャンプできるって、本当にESなのかなと不思議に思ったけど、やっぱりESだった。

でも、私の背中を支える彼の左腕に感触が少し変な気がした。妙に短い。

私は首も半分やけどしていたので、頭を回すとヒリヒリ痛みが走ったけれど、出来る限り頭を左に回し、彼の左腕を視野に入れた。

そこには肘から先が無かった。爆発に巻き込まれたのだろう。

でも、もっと理解不能だったのは、切断面から見えているものが骨や筋肉ではなく、スチール製の支柱やフレキケーブル、何本もの精細な樹脂のパイプのようなものだった。

「その手、義手だったの?」

彼はジャンプして、管理棟から離れながら、首を横に振った。

「ううん」

「でも、その手、機械じゃない?」

「手だけではなくて、全身、機械なんだ」

「どういう意味?」

「僕は人間ではないんだ。アンドロイド。人間そっくりのロボット」

「えっ、人間じゃない?どういう意味?」

「そのままの意味」

私はまじまじと彼の顔を見た。どう見ても、生身の人間にしか見えない。でも彼の左手が機械であることも確かだった。

それから彼の全身を見渡した。右の脇腹に直径10cmくらいの穴が開いてえぐられていた。人間の体にそんな大きな穴が開けば立っていられない。それどころか出血多量ですぐに死んでしまう。でも、彼は全く痛そうなそぶりを見せず、全く出血していなかった。その穴も同じく金属製の部品や樹脂のパイプ、配線などが垂れ下がっていた。

「信じられない」

私たちは、管理棟や燃料タンクの爆発現場からかなり離れた所まで来た。

確かこの辺りには、医療センターがあったはず。そうか、ESは私を意図して医療センターへ運んでくれたんだ。

「医療チームの人がいるか、探してみる」

着地すると、私を抱えたまま付近を歩き始めた。

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