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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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欠点が必要

再びヘリがミサイルを発射、その先にESがいた。着弾地点から煙が巻き起こり、その中から彼の体が枯れ葉のように舞って落ちたのが見えた。

そんな!

あのヘリ、許せない。彼は無関係の外国人なのに。

ヘリはまだ私に気が付いていない。

私は家の陰からヘリの横方向へ出来るだけ近付き、スコープでロックし、引き金を引いた。

ロケット弾は一直線にヘリに向かい、横っ腹を貫通。ヘリは直後に空中で爆発炎上し、斜めにズルズルと丘の向こうへ墜落し、地上で更に爆発した。

大急ぎで、ESの元に駆け寄った。彼はボロ雑巾のように土に半分埋まっていた。

人が死ぬのはあっけない。

しばらくぼーっと立ち尽くした。

泣きはしなかったけど、頭が空白になり何も考えられず、じわじわ全身の力が抜けていくのが分かった。

感情が消えていく感覚、空虚になっていく感覚。

きっと今、私の目から生気が抜けて、死んだ魚みたいな目になっているんだろうな。

そう思った時、突然、地面に突き出ていた手がムクムクッと動いた。そして、土を割って上半身がゆっくりと地中からはいずり出てきた。

「あーあ、一張羅が台無しだ」

「あの爆発に巻き込まれて、無事だったの?」

「ちょっと体が丈夫に出来てるからね」

「ちょっと所じゃないわ、奇跡よ。でも」

「でも、何?」

「助かって、本当に良かった」

自分にこんなに他人を心配する気持ちがあることに驚いた。今までの私の人間関係は基本的に全て私中心だったから。

誰かと友達になりたいと思って友達になるのではなくて、孤立しないために誰かと一緒にいる、そんな感じだった。だから、私にとって友達とは、扱いやすくて私より劣っている人。結果的に、学校や環境が変われば、すぐに切れてしまう関係。

私は、人を好きになるという感情が分からない人間だった。小さい頃から、本やテレビを見て、感動するということが一度もなかった。

私の中の何かがおかしい、漠然とそんな気持ちを以前から持っていた。だから看護学校へ行き、衛生兵になった。でもそれは、本心から苦しんでいる人、困っている人を助けたいと感じたわけではなく、そういう環境に身を置けば、少しは人間らしい感情を持てるようになるのではないかと、無意識に感じたから。

あくまでも打算的であり、そこに私の気持ちなどは存在しえなかった。

でも、今、ESが生きていて、本当に良かった。そして、自分にそんな人間らしい感情があり、他人を心配できる能力があるということに安心して、嬉しくもあった。

何で、私は変わったのだろう?

死を身近に感じた?それはつまり、生への諦め?

例え一瞬であっても、今日、大義のために死ぬのもありかもと、思った。これから先、生きることを諦めた。私が生きない分、誰かに生きてほしいと、無意識に感じてた。

誰かの幸せを願うには、程度の差こそあるけれど、自分に対して一種の諦めが必要なんだとその時気付いた。そして、自分に対しての諦め、自分に何か決定的に欠けているもの、それがはっきり分かった時、それを持っている人に魅力を感じる。人を好きになるという感情は自分に欠けているものがあると認識することが前提だった。

今までの私は、頭でっかちの思い上がりだったのだ。

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