集落制圧
小高い丘がうねうねと続く丘陵地帯。景色はのどかで、本当ならもっと穏やかな気分になれるのに、とても景色を楽しむ気にはなれなかった。
しばらく行くと、小さな集落が見えてきた。が、家々の隙間から、中央の広場に兵員輸送ヘリが着陸しているのが見えた。
団長が身を低くしろと手で合図を送り、腹這いになって、双眼鏡を覗く。
「まずい。あの村はすでに、敵軍に占領されている」
地図を広げ、迂回路を探した。
村はちょうど二つの谷間の合流箇所にあるので、迂回するにはかなり山を登らねばならず、遠回りになる。
「交通の要所を押さえてやがる」
彼は呟き、それから斥候を出した。
しばらくして、斥候役の男が帰ってきた。
「輸送ヘリが1台と、歩兵が1分隊程度」
私達の装備にはロケットランチャーがあり、20人いた。
「勝てない戦いでは無いな」
団長がロケランでヘリを撃破後、歩兵を殲滅する計画を立てた。歩兵は歩哨に数人立っていて、残りは宿屋を占拠していた。
「私が合図するまで、あなたはここで待っていて」
私はESの方を向いて言った。
民兵団は、腰をかがめて、村に近づき、物陰に隠れつつ、数人が宿屋の入り口が良く見える位置に、数人が歩哨の見える位置に付いた。
団長の合図とともに、ロケランでヘリを砲撃。直撃し炎上。同時に歩哨を狙撃して倒した。
爆音に驚き、宿屋から飛び出てきた歩兵を銃撃、バタバタとなぎ倒す。
私も民兵だからライフルは持っているけれど衛生兵だから、後方から援護していた。
銃撃音が、一旦、止む。異様な静けさ。逆に怪しさを感じた。
民兵の数人が、宿屋の入り口に近寄ると、中から敵が銃撃してきた。
すかさずグレネードを中に投げ込む。続いて爆音と砂埃が入り口から吹き出した。
ガラガラっと家の中から音が聞こえ、民兵が数人宿屋になだれ込んだ。
でも、銃声が聞こえない。あれっ、どうしたのだろう?
すると、数人のアゼルバイジャン兵が頭に手をやり、私たち民兵の銃を向けられて、ぞろぞろと宿屋から出てきた。
敵兵が投降したのだった。
銃撃戦で、私たち民兵のメンバーに負傷者は出たけど、死者は出なかった。良かった。
意外にあっけなく村を奪還できた。
私は負傷者の救護に急いで、応急処置をした。
一通り終わり、ESを思い出したので、村の外れへ行き、手を振った。
ESが物陰から身を現した。
「終わった?」
学校の宿題か何かが終わったかのような、あっけらかんとした言い方だった。
2人で、村の中心部へ歩いて行った。敵兵の捕虜が数人、後ろ手に縛られて、地面にうつぶせで横にされていた。
これで、後は基地に向かうだけと、安心した。
他の民兵の人達と軽く雑談して、昼食の準備を始めた。