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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
雨の日のランデブー
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押し入れ

その時、家の外からアパートの階段を上ってくる足音が聞こえた。このテンポはお母さんのもの。

「あっ、お母さんが帰ってきた」

どうしよう?

素直に紹介する?

機械で出来ていると説明しても信じてもらえないだろうし、もし信じたとしても余計に怖がるだろうし。

逆に普通に人間の友達と紹介したら、お母さんの行動や反応は全く予想ができない。今はまだ朝早いから、男の子が自宅に宿泊したと受け取られてしまう。実際したのだけれど。

どうしよう?どうしよう?

迷っている間に玄関が開いて、お母さんが買い物袋を抱えて家に入ってきた。いつも大抵帰宅途中に近所のスーパーで買い物をしてくる。

「ただいま」

怒られるかもしれないと、立ちすくむ私を見てお母さんは

「どうしたの?」

「・・・」

振り返るとESが部屋にいない。どこに行ったのかしら?状況を察して隠れてくれたのかしら?

その時、後ろの部屋からゴトンッと音がした。

「あれ?何か音がしなかった?」

「ううん。何にもない。机の上の荷物がちょっとバランス崩しただけと思う」

お母さんが背中をこちらに向けて、買い物を冷蔵庫に入れている最中に、そっと隣の部屋に行く。押し入れの戸がうっすら開いている。そーっと開けるとESが丸くうずくまっていた。

私は口に人差し指を当てて、小さな声でシーッと言う。彼はうんうんと無言でうなずき、両手を合わせて少し傾けた頭の横に当てる。

眠る合図。

彼はこのまま眠ってくれるみたい。

ほっとまずは安心する。

でも、しばらくして目が覚めてのそっと出てくるかもしれない。

メモ帳から1枚破り取ると、“お母さんのいる間は、出てこないでください。ごめんなさい”と書いて、彼の手に握らせる。

居間に戻り、お母さんと軽い雑談をするけれど、私の心の中はESのことで一杯だった。

まずいろいろ話してみたい。どんなことに興味があるのかも知りたいし、興味が合えば一緒にできるかもしれない、など空想が膨らむ。

このまましばらく過ごせば、私の家に彼は居残ってくれるに違いない。

そんな風に私は思っていた。

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