表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
67/157

本当の原因

今日は歩き回ったし、他にもいろんなことがあったから疲れていたので、早めに寝たかった。テントで寝ている人が多いが、私はテントを持っていなかった。仕方がないから、窪地の端に行き、寝袋を敷いて横になった。

「じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

今日1日色々なことがあって疲れてるはずなのに、目が冴えて眠れない。30分くらい経っただろうか。

「ねぇ、起きてる?」

隣のESに声をかけた。

「うん、起きてるよ」

「あなたも、運が悪いわね。こんな戦争中の国に来てしまって。何でこの戦争が起きたか知ってる?」

「民族紛争って、聞いたけど」

「表向きはね。私も小さい頃はずっとそう思っていた。でも、実は違ってた」

周囲に人がいないのを確認した。

「アゼルバイジャンの首都、バクーは、カスピ海の沖合いで原油が出るの。バクー周辺の海沿いにはアゼルバイジャン人が住んでいて、私達アルメニア人は内陸部に住んでるの。だから、原油の利益は全部アゼルバイジャン人のものになってしまう。さらに私達アルメニア人は石油産業に就職も出来ない。その不公平さが紛争の本当の原因なの。同じ国で2級市民扱いされるくらいなら、同じ民族の隣のアルメニアとの併合を望むって。もし皆が平等だったら、わざわざ併合したいなんて誰も思わないわ。結局お金の話なの。でもそう言うと外国の支持を受けられないから、民族の誇りとかそれらしいことを言ってるだけ」

彼は何もしゃべらない。

「実際に戦場にいる兵士はみんな、自分達は正義のために戦っていると思っているけど、上の人達は敵も味方もお金のことしか考えてないわ。だから、私は大義とか正義とか思想、宗教、民族、みんな信じてない。ただ、失われる命を一つでも救いたい、それが私が戦場にいる唯一の理由」

自国人に対してだったら、言うべきか言わざるべきか、色々考えるけど、外国人に対してはいずれ自分の国に帰ってしまうという気楽さがあって、つい本音を言ってしまった。

彼は何も言わないから、聞いているのか聞いていないのか分からない。

いつの間にか私は眠ってしまっていた。


翌日起きると、団長が全員を集めた。

「我が民兵団はこれより、アルメニアとアルツァフ合同軍の基地へ行き、武器や物資を補給後、ステパナケルト東方戦線の支援に行く」

停電がやっと復旧し、無線連絡が使えるようになり、軍指令部と連絡が取れたのだった。

「国際空港は、これから行く基地を通り越した向こうだから、途中までは一緒に行けるわ。残念だけど、そこでお別れね」

「そこで十分ありがたいよ。後は自分で行ける」

各自荷物を整えると、民兵団は出発した。ESが民間人だから、不意の戦闘に巻き込まれないために、私と彼は隊列の一番最後を歩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ