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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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合流

手を差し出すと、彼は握り返した。その手は温かく、普通の体温。

「私はソフィア。あなたは?」

「ESと、みんな呼んでる」

「ES?あー、イニシャルのことね。じゃあ、私もESと呼んで良い?どこから来たの?」

「日本」

「日本?」

確かアジアの極東にあった気がする。場所ははっきり分からないけど、イメージはおぼろげながら、ある。科学技術と伝統、そしてアニメ。

「年は?」

「一応、17」

「一応?」

住民登録がしっかりしていない国なのかもしれないと、その時は思った。

「何で、こんな国に来たの?」

「それは・・・」

むにゃむにゃと答えをはぐらかした。

その時は、単に答えたくないと思ったの。

戦争をしているこんな国に、好きこのんで来るなんて、放浪や逃避行かと思ったから。

誰だって、今いる場所が嫌になって遠くに行きたくなるという気持ちは時々起きる。

「じゃ、早速行きましょう。さっきの男達が仲間を呼ぶかもしれない。少し北に国防軍の基地があるの。まずはそこに向かいましょう。今から歩けば、明日中には着くわ」

私たちは、闇夜に紛れて、基地へ向かうことにした。

空港はステパナケルトの向こう側だけど、まずは基地にさえ着けば、何とかなるはず。

それに、私たち民兵団の目的地はステパナケルトで同じ方向だから、合流できる確率が高くなる。

村の外れまで来ると、周囲は畑と山林だけになり、月明りだけが頼りだった。

うねうねと田舎道を進んで行った。

フクロウの鳴き声と、野犬もしくはオオカミのような獣の遠吠えも聞こえた。

ガサッ

突然、斜め後ろの草むらで、不自然な音が聞こえた。小動物ではなく、人の足音のような。

「武器を捨てて、手を上げろ」

直後に、そう声が聞こえた。

私は仕方なく、ライフルを肩から下し、ESはその場に立ち止まった。

後ろから足音が近づいてきた。二人。

私たちを地面に押し倒そうとした時、ESが男の1人を軽々と放り投げた。そして、私を押さえている男に殴りかかろうと、こっちへ突進してきた。

「待って」

私は声を上げた。それはESに対してでもあるし、私を押さえている男に対してでもあった。

「ソフィアよ。おなじ民兵団の」

男は私の顔を覗き込んだ。

「あれっ、ソフィアか?なんだ、敵かと思った」

ESは立ち止まり、様子をうかがった。

「悪い悪い。暗いから顔が見えなかった。それに、ソフィアは村の市街戦に巻き込まれたって聞いてたから」

投げ飛ばされた男も、いててててと言いながら、起き上がった。

「でも、ソフィアが生きてて良かった。みんな心配してた。今はこの山林の奥の窪地で野営している。俺たちは見張りの当直さ」

私たちは指さされた方へ山林を少し入ると、窪地があり、そこに数個のテントがあった。

さらにその中心に数人が火を囲んで起きていた。

「団長。ソフィア、ただ今帰還しました」

団長は顔を上げ、驚いた顔をした。

「ソフィア、生きてたのか?」

「はい。市街戦の最中に、はぐれてしまいました。ご心配かけてすみませんでした」

「いやー、良かった良かった。で、そっちの連れは?」

「村で市街戦の最中に救助した民間人です。友軍基地、または空港まで送り届けるつもりです」

「うちの団は、明日ステパナケルトに向かうから、方向は一緒だ。ただ、足手まといにならんようにな」

ESを一緒に連れて行っても良いと認められ、私は安心した。

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