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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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出会い

ステパナケルト郊外の村に近づくと、何本か煙が立っているのが見え、やがてドン、ドンという戦車の砲弾の発射音が聞こえてきた。

ステパナケルト中心部はまだ占領されていないものの、郊外の村にアゼルバイジャン軍の戦車隊と歩兵部隊が侵入し展開していた。

そこへアルメニアとアルツァフ合同軍が総攻撃をかけ、敵軍を押し戻しつつあった。

典型的な市街戦だった。崩れた建物、砂ぼこり、噴煙、燃料の炎上、爆発した戦車とその破片、そして敵味方の兵士の焼け焦げた死体。

私達の任務は、奪還地からの敵勢力の掃討と負傷兵の救護。

どこに敵兵が潜んでいるか分からないから、皆極度に緊張していた。

数人のグループに分かれて、建物を端から、しらみ潰しに調べていく。

「クリア」

調べ終わり、敵兵、負傷者共にいなければ、建物の入口にスプレーでクリアとマークを付ける。

いくつかの建物を調べた後に、少し大きな宿屋に入った。

2階に上り、ある客室に入った時。

私は今でもその光景をありありと思い出すことができる。

一人の少年が床に倒れていた。ぐったりしているが、私の気配でうっすらと目を開けた。

私はすぐに団長を呼んだ。

「負傷者がいました」

団長は来たが、彼を見ると躊躇した。

「外国人か?観光客だろう。どちらにしても、味方の兵ではない」

確かに、その少年の顔つきは、私達アルメニア人とは違っていて、オリエントの面影があった。

そして、味方の兵を救護すれば、以降の戦力になるが、外国人を助けても私達の勢力には何のメリットがない。

だけど、団長が躊躇した理由はそれだけではなかった。

少年は鎖で縛られていた。それも時限爆弾に。

時計の針の残り時間、10分。

「でも、私達の任務は負傷者の救護です。彼も含まれます」

「見てみろ、鎖を身体中に巻かれて、時限爆弾付きだ。間に合わない」

「私なら、大丈夫です。切断用の工具を持っています」

「トラップが仕掛けられているかもしれない。アゼルバイジャン人め、残酷なことをしやがる。生きた人間を、それも観光客をトラップに利用するとは。もう時限がない。退避しろ」

私達は、宿屋から出た。

皆、次の建物に移ったが、私はどうしてもさっきの少年が忘れられなかった。

すぐに客室に戻った。

「大丈夫。今外すから」

後3分。

大型ニッパーで鎖を切断し、彼を肩に担いだ。

急いで階段を下り、宿屋から出る。隣の家の影に潜り込んだ瞬間、宿屋が爆発した。

あれに巻き込まれていたら、確実に死んでいた。

粉塵が収まってから周囲を見渡したが、仲間の民兵とはぐれてしまった。

一人で負傷者を担いで歩き回るのは危険だし、夕方になってきた。

私は近くの空いている家を使わせてもらうことにした。

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