表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
58/157

さようなら

そんなことを考えながら、涼くんと自宅のアパート前に着く。

ふと見ると、さっきの外人の女の子が道端に立っている。

「あれっ、さっきの子」

参道から私の家まで、そんなに遠くない。また、この辺りではかなり大きい第2公園へ行くには、住宅街の中を通って行く必要がある。

彼女も公園に行く途中なのかもしれない。

特に社交的という印象ではなかったから、私は声をかけずにアパートの階段に向かう。

階段を上りかけて、後ろに涼くんがいないのに気付く。

周りを見ると、涼くんは外人の女の子の前で立ち止まっている。

階段を降りて、涼くんの側まで行く。

「知り合いですか?」

さっきは、知らないと答えたはずだけど。

涼くんは立ち止まったまま、何も答えない。

外人の女の子が歩き始めると、彼も一緒に少し後ろを付いていく。

「涼くん、どこか行くのですか?」

すると、彼女が彼の耳元で何かを小声でささやく。わずかに聞こえたけど、外国語。

涼くんは無表情に振り向く。いつも表情は乏しいけど、でも今回はいつもと違って、全く生気がない。

「比呂美さん、僕は行かなければなりません。今までありがとう。さようなら」

一瞬、何を言っているのか分からない。

それから、頭の中で何度も今のセリフを繰り返し、涼くんが私の元から去ろうとしていると分かる。

えっ、何で?

理由は?

「ちょっとだけで良いので、待って下さい」

つい手を差し出すが、届く距離でもなく、彼らは私を全く気にせずに、そのまま歩き去る。

へなへなと力なく、私はその場に倒れ込む。

全く理由が分からない。

あの子は、一体誰?

涼くんは知らないと言っていたけど、嘘をついた?でも、そんな様子には見えなかった。

二人の後ろ姿が、角を曲がり、見えなくなる。

私は追いかけた方が良いのだろうか?

でも、それでは典型的な三角関係で、私にそんな資格はあるのだろうか?

考えてみると、私は涼くんにひどい扱いをしていたかもしれない。毎晩、狭い押し入れに閉じ込めていた。

口では不満を言わなかったけど、本当は嫌だったのかもしれない。

こんな当たり前のことに気付かないなんて、自分が情けない。

他にもいろいろ思い当たることはある。

本当だったら、私一人でしなければならないことに、彼を巻き込んだことが何度もあった。

彼の強さに依存して、いつしかそれがあって当たり前のように思い込んでいた。

もともと、特に何の取り柄もない私なんかが、涼くんのような頼りになって、たくましくて、強くって、見た目もかっこ良くて、そんなパーフェクトの人と、釣り合いが取れるわけが無かった。

こうなることは、必然だった。もう諦めよう。

それに、どうせ涼くんはロボットだから、本当に付き合うことは出来ない。

ロボット?

彼がロボットだというを忘れていた。

そういえば、あの外人の女の子と一緒の時の涼くんは、少し挙動が怪しかった。

立っていた時は完全に静止していた。

まるで機械そのままみたいに。

もしかして、私の知らない何か事情があるのかもしれない。

少なくとも、その事情の有り無しは知りたい。

もう一回だけ、最後のチャンスはあっても良いはず。

それで、涼くんの意思として、私と別れるというのなら、もう諦める。

だから、最後の一押しはしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ