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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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不思議な子

思案しながら、ふと視線を左に向けると、外人が隣のベンチに座っている。金髪の白人。女性というよりは女の子という感じ。年は私より少し上くらい。

周りに人がいない所を見ると、1人旅なのかも。

近所のコンビニの店員はほぼ全員中国人だから、外人と言えば中国人の印象なので、白人を見かけるのは珍しい。

そして、それ以上に珍しい、いや不思議なのは、その子がこっちをじっと見ていること。

なぜか彼女は私をじっと見つめている。

私に外人の知り合いはいないから、最初は私の後ろの誰かを見ているのかと思い、後ろを振り返るが、そこには誰もいない。

ロボットだから、涼くんに知り合いがいるとも思えない。

じゃ、私たちを見ているの?

私たちが今していた会話と言えば、おせんべいを食べる食べないの話。

おせんべいが珍しいのかな?

視線を元に戻し、前を向く。

たまたま彼女がこっちを向いていただけかもしれない。

それでも、視野の隅で、こっちを見続ける彼女が分かる。

重い。

とにかく重い。

外人だと顔の表情が分からない。

彼女が私たちに興味を持ってるのか、それとも何か抗議のつもりなのか、どっちなの?

私の見た印象では、彼女の目付きに険しさを感じない。反対に不思議そうな素朴な表情でこちらを見ている気がする。

右隣の涼くんに、一応確認する。

「私の左の外人さんは、涼くんの知り合いですか?」

涼くんが私を越して、左隣の外人を見る。

「いや、知らない」

「さっきから、こっちを見ていて、何でかなあと思って」

彼女に連れはいなさそう。いつまで経っても、誰も彼女の元に来ない。

やっぱり一人旅なのかもしれない。

一人旅って、良いものなのでしょうか?

私には、その良さが分からない。

そんな勇気は私には無い。特に用もないのに一人で外を出歩くのにも抵抗を感じるのに。友達がいないのかと、憐れみと同情を集めそうだから。

彼女は純粋に日本に興味を持っているのかもしれない。東アジア的なオリエントに興味を抱いたり、またはアニメに憧れて日本に行きたくなったのかも。

そして、たまたま身近に一緒に旅行してくれる人がいなかっただけかもしれない。

そうだったら、せっかく遠い国からわざわざ日本まで来てくれたのだから、良い思い出を作ってあげたいし、そうできるように手伝いたい。

私は勇気を出して、声をかけてみることにする。

おせんべいを食べたいだけ、ということは無いと思うけど、会話を始める良いきっかけになる。

「おせんべい、食べますか?」

急に声をかけたにもかかわらず、彼女は驚いた風でもなく、逆に嫌そうな素振りもなく、無表情。

無言のまま、うんうんと首を上下に振る。

私は紙袋ごと、おせんべいを渡す。

言葉が通じるのだったら、何か会話を続けたいけど、彼女はそのままボリボリっと食べる。

彫りの深い白い肌で、青い瞳と金髪。

ヨーロッパ出身ということは分かる。

彼女はそのまま、1枚おせんべいを食べてしまう。

彼女の方から会話を振ることは無さそうで、私から続ける言葉も見つからない。

外人って、こんな無愛想なのかな?

それとも、この人の個人的な性格なのかな?

この無表情と無反応さは、無愛想というよりも、もっと別の何かに思える。

仕方がないから、私は立ち上がる。

「じゃ、私たちは、もう行きますね」

そう言い残すと、涼くんと神社へ向かう。

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