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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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休日の散歩

押し入れの隙間から朝日が差し込む。

「今日の夢は、気持ち悪いほどリアルだったなあ」

朝から嫌な気分になる。

でも数分経つと忘れ、いつもの生活に戻る。


週末の土曜日。

珍しく私のバイトの休みと、涼くんのバイトの休みが重なる。

午前中はお母さんが寝ているから、おとなしく勉強していたけれど、昼過ぎにお母さんが仕事に出かけると涼くんが押し入れから出てくる。

もしクラスの子と長時間一緒の部屋に居たら気まずくなりそうな気がするけど、涼くんはロボットだから、一緒に居ても居心地が悪くなったり気が散ることはない。でも同じ日に休みが重なることは滅多にないから、一緒に散歩に出かけることにする。

彼はほぼ毎日バイトで、家の付近をほとんど知らないはず。

私は小さい頃から住んでいるので、わざわざ散歩しようという気にはならないけど、彼に池袋や京都で助けてもらったわずかながらのお礼をしたい。

それに、私も学校とバイト先と家しか行くところがなくて、休みの日は家でゴロゴロしていて味気ない日々を送っている。

一人で散歩するのは味気ないけど、二人なら街を紹介してあげるという自分への言い訳も成り立つし。

二人で家を出て、参道に向かう。大宮でまず一番初めに行く所と言えば、やっぱり氷川神社でしょう。

家の近くに氷川神社という大きな神社があって、その参道がとても長くJRの隣駅まで続いている。

参道の中程から、神社に向かって歩く。参道の北半分は店が少ないので、純粋に参拝客しか歩かない。

反対に、南の参道の周りにはいろんな店が出ていて、カフェやイタリアン、雑貨屋や美容室などがあって、人通りが多い。

私たちが向かったのは神社方向だから、店は少ない。

週末の午後、杉並木の影の間から陽が差し、鳥の鳴き声が聞こえる。ホトトギス?

参道をのんびりと歩いたのは、何年振りだろう?

小さい頃にお母さんに連れられて、歩いた思い出がある。

それ以外は、初詣の思い出。

友達とラッシュ並みの人混みの中を数百mを1時間くらいかけて、じわじわゆっくり進んだ。

お正月や十日市の日は参拝客でごった返すけど、今日は何もないから、人はまばら。

ジョギングの人か、高齢者の散歩、またはベビーカーを押すママさんくらいしか見かけない。

少し歩くと、おせんべい屋さんがある。この辺りで数少ない食べ物屋さん。

お腹が空いたし、食べることを口実に参道沿いのベンチに座りもしたかった。他に参道を行く人を見ることができるので。

私はおせんべいを2枚買って、ベンチに座る。

「はい、どうぞ」

そう言って、おせんべいを1枚、涼くんに渡す。

「えっ、僕は良いよ」

そうだった。涼くんは基本的に食べないんだった。

ずっと参道を2人で並んで歩いていて、自分一人感慨にふけっていたことに気付く。

2人でいる時に1人だけ食べるのは何か悪い気がするから、つい2人分買ってしまったけど、涼くんはロボットだから、もともと食べるということをしない。

「すっかり忘れていました。でも、美味しいですよ」

「でも、やっぱり良いや。2枚食べなよ」

「そうですか?でも、どうしようかな」

2枚食べても良いけど、同じ味が続くとちょっと飽きてしまう。

家に持って帰って後で食べても良いけど、これから神社へ行くのに、ずっとおせんべいの紙袋を手に持ったまま歩かなければならないのも面倒。

すぐ近くだと思ってポーチを持ってこなかったから、入れるカバンもない。

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