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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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アンドロイドの夢

周囲は限りなく広がる山岳地帯。3000m級の山脈が連なる。

人が登れないような切り立った急な傾斜に岩肌が露出している。さらに山頂に近くなると白いものが積もっている、万年雪だ。

視線を下におろすと、山の麓に低木とうっすらとした草むらが広がるが、動物は1匹も見えない。そして、人も。

町や村など人のいる痕跡すら全くない。

標高から空気は冷たいはずだが、なぜか全く寒さを感じない。暑くもなく寒くもなく、居心地が良い。

周囲には何もない、だだっ広い解放感。住むには最適な場所かも。こんな所ならのんびり暮らせる。

ふと、そんな感情が沸き起こる。

でも。

視線を上に向けると、はるか向こうの山々の上空に黒い点が一つ見える。

それは段々近づいてきて、形がはっきり見えてくる。飛行機だ。

カーキ色のいかつい形の軍用機。大型でのっそり飛んでいる感じだから、戦闘機ではなく輸送機。

1機だけではなく数機、いや数えきれないくらいの多数。

こんなにたくさん飛んでくると威圧と恐怖を感じる。何が起こるのだろう?


涼くんは目が覚める。

周囲は薄暗い。隣に段ボールがある。縦に弱い光が入り込んでくる。この縦の光は押し入れの隙間から差し込んでくる。

あっ、ここは押し入れの中。いつも寝ている場所。

そうすると、さっきの山岳地帯や飛行機の群れは夢?

変な夢を見たな。それにしては妙にリアルだった。

何であんな夢を見たのだろう?


涼くんは押し入れのふすまをガラッと開けて、部屋に出る。

平日の昼過ぎ。私は学校、お母さんは仕事。家には誰もいない。

涼くんはバイトへ行く。


それから数日後。

涼くんは見慣れないこじんまりとした質素な一室にいる。ベッドが一つ、机が一つ、窓が一つ。部屋の雰囲気から、どこかの民家の一室。

窓から外を見ると、石造りの建物がいくつかある。それぞれ隣の建物とかなり離れて立っている。

建物はどれも低層で、一番大きなもので4,5階。自分は商店の2階にいることに気付く。

道がやけに広い。通りに人通りは全くなく、車は1台も走っていない。

建物のデザインは洋風で、多分ヨーロッパのどこかの国。パリやロンドンのような活気はなく、どこかしら貧相さを感じる。

でも首都だということは分かる。日本と比べると、ここはとても田舎だけど、一応この国の首都。

あっ、僕は旅行者なんだ。

その時に、そんな気がした。

そして、目の前に見える建物は共和国国防軍の司令部だと、なぜか分かる。

自分にはやるべき使命がある。急に頭の中にそんな言葉が浮かぶ。

それが何を意味するのかは分からないけど、この場所で自分がやらなければならないことは分かる。その目的のためにここに来た。

両足をしっかり床に付け、仁王立ちになり、片手を高く上げる。目を閉じて意識を集中する。体の中で何かモードが切り替わった気配を感じる。

次の瞬間。

意識がなくなった。


目が覚めると、見慣れた薄暗闇。いつもの押し入れの中。

夢だったんだと、気付く。

妙にリアルな夢。でも所詮夢。

すぐに忘れて、いつも通りの生活に埋没する。

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