表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
48/157

地上へ

突然、大蛇の頭がこっちに突進してきて、パクッと大きな口を開ける。

上あごから巨大な2本の牙が生えている。鱗は真っ白だけど、口の中は真っ赤でしわくちゃで、ぬるぬるしている。そして、そのしわの奥に、底の見えない穴が真っ暗な見える。

私は目を閉じて、身を縮める。ちょうどその時、私のお腹に急にグッと負荷がかかる。それから全身に加速度を感じて、気が付くと御堂ははるか下にあり、宙に浮いている。

次の瞬間、またお腹にグッと力がかかり、それは涼くんが御堂上空の穴へ着地した衝撃と気付く。

はるか下で、大蛇が何事が起きた?と、キョロキョロっとして、上を見て私と目が合う。

涼くんは、私と天上さんを両肩に担いだまま、入り口の穴をくぐり、さっき来た横穴にでる。

「これで、ひとまず安心」

涼くんがそう言って、私を下ろそうとすると、空洞への穴から、さっきの大蛇が頭をにゅーっと突き出す。

「うわっ」

涼くんは再び私を肩に担ぎ、もう片方の肩に天上さんを担いで、一気に風上に向かって走り出す。

大蛇は横穴を私たち向かって追いかけてくる。

そのスピードが予想以上に速い。蛇って、こんなに速く進めるの?

私たちのすぐ後ろまで追い付いて、何度も口をパクッと開けて、食いつこうとする。

涼くんも、大急ぎでダッシュする。

横穴は、2人を担いで走れるほど、広くはない。だから、壁や天井が低くなっている箇所では、体をぶつけないように身を屈めなければならず、そうすると走る速度が遅くなる。

ジワジワ大蛇と私たちの距離が縮まってきて、次の狭い箇所で速度を落としたら、大蛇に追いつけれて食べられてしまう、となった時。

はるか前方に微かな光が見える。

と、大蛇は、突然追いかけるのをやめ、スルスルっと元の空洞へ戻っていく。

「はぁー、とりあえず助かりました」

涼くんも一旦休憩する。

「何で、引き返したんだろう?」

「強い光が苦手だったのではないでしょうか?」

私は歩いて行くことにし、涼くんは天上さんだけ担ぐ。

しばらく歩くと、だんだん、その光は大きくなり、まぶしくて目が開けられないほどになる。

明るさに慣れてきて目を開けると、洞穴の正面に、大きな1枚岩があり、その上の方の隙間から外の光が差し込んでくる。

この光の強さは、太陽の光。つまり、この岩のすぐ後ろは地上。

なんとも言えない安心感と、開放感。やっぱり地上が良い。

落ち着いてくると、鼻が利くようになり、かすかに草の匂いがする。

「もう地上?ですね」

「この目の前の岩が洞穴にふたをしているから、どける」

涼くんが天上さんを洞穴の床に下す。彼は完全に気を失っている。

1枚岩を押すと、岩はズズズズズーとずれて、人が通れるくらいの隙間ができる。

その隙間から見える風景は、どこかの森林の中。周囲は青々とした木々が連なり、足元には雑草が生い茂る。その雑草がちょうど同じくらいの背の高さなので、雑草なんだけどきれい統一されて見える。

どこかで小鳥の鳴き声がする。

今までの危険な状況とは全く正反対の、いたってのどか。

「今度こそ、本当に助かりました」

雑草の絨毯の上に、へなへなっと倒れ込む。

考えてみると、昨日?または一昨日に誘拐されてから、ハラハラドキドキしっ放しだった。

ここがどこか分からないけど、地上なら、どこかへ向けて歩けば、人のいるところに出られる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ