表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
47/157

大蛇

「お前たち、もしかして、道長の秘宝を知らないな。じゃー、教えてやろう。藤原道長の究極の秘宝、それは不老不死の力を持つ秘石だ」

「不老不死の秘石?」

「そう。栄華を極めた道長でさえも、よる歳には勝てず、老いさらばえる。その恐怖から逃れるために、道長が日本中、いや世界中に使者をだし探し求めたもの。それが不老不死の石だ。それがここにあるはずだ。早く出せ」

「そんなもの、持ってないよ」

涼くんは、両手を広げて、ボディーチェックを受ける真似をする。天上さんが涼くんの体をサッと調べて、無いと分かると、今度は私の体も調べる。それでも無いと、私たちに興味を失くし、他の所を調べ始める。

もう私たちは、眼中にないみたい。

わざわざ、私を埼玉から京都まで誘拐してきたのに、宝の場所が分かって、かつ目的の石を持っていないと分かると、あっさりと興味を失くすなんて。

ちょっと拍子抜け。

この人にとっては、人間関係より重要なものがあって、その価値観で動いている人なんだ。

私とは、全く別世界の人。

「私たちは、どうしましょうか?」

「何か巻物だけもらったら、帰ろう」

天上さんと、2人の能面の邪魔にならないように、部屋の中の奥の方で、何か価値のありそうな書き物を探そうとした時。

シューと後ろで、聞きなれない音がする。

振り返ると、巨大な爬虫類が御堂の正面扉から、ヌーッと顔を入り込む。口の先から真っ赤な2つに分かれた下をチロチロと出していて、それがシューっと音を出している。

その顔の幅、約1mくらい。

外を見ると、直径1mくらいの巨大な白い管のようなものが、御堂の周りを取り囲んでいる。それは巨大なヘビ、白い大蛇。

さっきまでは御堂は水銀のお堀に囲まれていたから、お堀の外からは、どんな生物も侵入できなかった。けれど、今見ると、お堀に木の板が掛かっていて、そこで御堂が外界と繋がっている。

「彼らがかけたお堀の橋を伝って、ヘビが入ってきた」

「あんな大きなヘビ、いるのですか?」

「ここの守り神?」

大蛇は、突然、能面の1人に頭からかぶり付く。一瞬で、胴辺りまで口に飲み込まれ、ほとんど抵抗する間もなく、あっという間に飲み込まれる。

大蛇の胴体に膨らんだ箇所ができて、それが少しずつ後ろに移動する。大蛇が伸びをすると、ポキポキポキと不気味な音がする。きっと、さっき飲み込まれた能面が、大蛇の中で押しつぶされ、体中が骨折したのだろう。

もう一人の能面と、天上さんは茫然と立ちすくむ。

大蛇は御堂の中へさらに頭を突っ込み、もう一人の能面に襲いかかろうとする。

銃を取りだし、大蛇に向かって撃つが、全く効果が無い。ちょっとうろこが凹んだのが分かる程度。

大蛇は能面の片足にかぶりつき、飲み込み始める。そのまま胴体まで口にすると、不自然に折れ曲がったもう一方の足を飲み込む。

「助けてくれー」

大蛇の口から片手を伸ばしながら能面が叫ぶが、次の瞬間パクッと丸呑みする。

のど元から膨らみがゆっくり蛇の胴体の後ろの方へ移動して、グイグイっと伸びをすると、ポキポキっと音がして、ちょっと膨らみが小さくなる。

「早く逃げよう」

涼くんが私を抱きかかえて、連子窓から御堂の縁側に出る。屋根にジャンプしようとした時、天上さんが大蛇に片足を噛まれているのが見える。

彼は必死に銃を大蛇に向けて発射するが、大蛇はびくともしない。

「あの人、助けてあげてください」

「えっ、僕たちの誘拐犯だよ」

「うん。でも、このままだと、ヘビに食べられちゃう。見捨てていけないです」

彼は、私を縁側に下すと、また連子窓から御堂の中に入る。

つかつかと大蛇の顔に近づくと、片足で大蛇の下あごを押さえ、手で上あごを持ち上げる。

「早く逃げろ」

天上さんは足を大蛇の口から抜く。太もも辺りにガッチリ噛み跡がついて、出血している。

涼くんは大蛇の顔を蹴ると、大蛇の頭は宝物をなぎ倒し、御堂の壁に当たる。

天上さんはよろよろっと数歩歩くと、倒れてしまう。

「しょうがないなー」

涼くんはそう言うと、天上さんを抱きかかえ、連子窓から縁側へ押し出す。それから、自分も縁側へ来て、私と天上さんを両肩に片手で抱きかかえて、御堂の屋根にジャンプする。

大蛇が御堂から頭を抜き、鎌首を持ち上げ、御堂の上をにらみ、シューと口先から真っ赤な2つに分かれた舌を出す。

その舌を見ると、生きた心地がしない。

「2人担いでいると、バランス取るのが難しい」

涼くんは御堂の斜めになった屋根の瓦の上で、足場を探す。その間に、大蛇が鎌首を御堂の屋根に近づけてくる。

この空洞に入ってきた穴は、御堂の屋根から約10mほど斜め上にある。

太田市の林の経験から、私一人なら涼くんは抱きかかえてジャンプできる。でも、今は二人で、私ともう一人は大人の男の人で、体重だって重い。

もしかして、ジャンプが届かない?そうすると、大蛇から逃げられない。

急に不安になる。

そうこうしているうちに、大蛇の頭が御堂の屋根に近づいて来て、動きが止まる。でも、赤い舌はチョロチョロさせる。

でも、よく見ると、ゆっくりこちらに近づいてくる。

これ、食べようと、距離やタイミングを見計らっている?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ