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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
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財宝発見

眼下に広がっていたのは、体育館ほどの大きさの空洞で、その周囲の壁がボワッと青白く光っている。

「何で、壁が青白く光ってるのですか?」

「多分、コケじゃないかな。光りゴケっていって、光る種類がコケがある」

その光のせいで、この空洞は明るい。

ここは、その空洞の、高さ的に真ん中くらいの位置で、体育館で言うと、館内のバスケットゴールの後ろにある、周囲に張り巡らされたベランダみたいな所。

空洞の真ん中には、神社の御堂のような建物が建っている。そして、その建物の周囲を、お堀が囲んでいる。

「あの御堂、厳重に守られているから、多分、あそこに財宝がある」

眼下の御堂を見下ろす。

「あの御堂に財宝はあるけど、昔の巻物もあるはず。藤原道長の直筆なら価値があるから、山田さんのおじいさんも満足するよ」

「じゃ、巻物だけ、取ってきたいです」

「分かった」

涼くんは私を再び抱き抱えると、10m以上離れた御堂の屋根にジャンプする。

そこから縁側に降りると、私を下ろす。

御堂の周りのお堀に、水が張ってあるのかと思っていたけれど、水面の輝き方が異様にキラキラする。滑らかに揺れてる。まるで金属みたい。

「あれ、何でしょうか?」

お堀を指差す。

「水銀だよ」

「キラキラと、すごくきれい」

「でも、猛毒だから気を付けて」

良く見てみると、お堀の近くだけ、きれいに苔が生えていない。このお堀は、御堂を完全に周囲の外界から断絶している。

御堂の壁の連子窓を涼くんが押すと、軽く中に開くので、私達は中に滑り込む。

中は薄暗くて何があるか分からないけど、窓からの明かりで目が慣れて、だんだんうっすらと見えてくる。

広さは20畳くらいで、いろいろな物が置いてある。

屏風や、壺、桐たんす、仏像など。まるで物置みたい。

でも、ここは宝物庫のはずじゃなかったっけ?

それにしては、あまりにも質素。

私は財宝と言うと、カリブ海の海賊の宝箱みたいに、黄金の金貨や、色とりどりの宝石や、キラキラ輝く宝石の付いた黄金の短剣などを想像していた。

ちょっと、いや、かなりガッカリする。

きっと、他に本当の財宝室があるに違いない。ここは、ちょっとした昔の人の生活用品が置いてあるだけなんだろう。

「山田さんに渡す古文書を、探そう」

我に返り、周囲を探し始める。

壺の中や、仏像の下、つづらの中など。

見える所には、それらしき巻物は置いていない。近くにあるつづらを開けてみる。

小さな木製の箱がいくつかあり、そのうちの一つを開けてみる。

すると、官宣旨と書かれた、縦書きの手紙のようなものが入っている。

「これ、価値あるのでしょうか?」

「見せて」

他の所を探していた涼くんに手渡そうとした時、御堂の外から人の声が聞こえる。

「隠れよう」

促され、近くの大きなつづらの中に、一緒に入りこみ、蓋を閉める。

蓋の隙間から外を覗くと、御堂の正面扉が開いて、天上さんと能面の男が二人、入ってくる。

「あの人も、ここに到達したのですね」

彼らは正面扉を開け放ち、外の光ゴケの光を室内に取り入れる。

「これが、道長の財宝か!」

天上さんが興奮気味に叫ぶ。

「この壺は、古代ペルシャの様式だ。こっちの仏像はまぎれもないガンダーラ美術だ。少しギリシャ彫刻の面影があるだろ。それがその証拠だ。こんなもの、当時の日本でも滅多に手に入れられない代物だ。さすが道長。ここにある物すべて、どれも値段が付けられないほどの値打ちがある」

興奮しっぱなし。

私はここにある物がそんなに高価な物とは分からなくて、どれもガラクタに見えた。

確かに学術的には価値があるのだろう。でも、私の触手は動かない。

「そんなに価値があったんですね」

小声で隣の涼くんの耳元でささやく

「僕も、こういう骨董品の価値は、あまり分からない」

つづらの外で、天上さんが、何かを探している。

「でも、肝心の秘宝が無い。道長が生涯をかけて探し求めた秘宝が。それこそ、我がヤタガラスが探し求めたいたものなのに」

天上さんが私たちの隠れているつづらの前に来て、蓋を開ける。

「あっ」

驚いて、茫然とした顔をする。

「お前たち、生きてたのか?」

「お陰様で」

涼くんが答えながら、立ち上がる。

「道長の秘宝はどこへやった?どうしても、見つからない」

「この部屋にある物が、道長の宝なんじゃないの?その仏像、ガンダーラなんだろう?それだけでも持って帰れば、お前の上役に褒められるんじゃないか?」

天上さんは私たちの入っていたつづらの中を覗き込んで調べる。

「おい、秘宝はどこだ?」

「だから、その壺とか、仏像とか、屏風とか」

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