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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
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下水道

パチンッ

彼がどこかを触ると、マンホール内にライトが点く。

照明のスイッチがあったみたい。

頭上のマンホールの上で、バタバタと足音が聞こえる。

「下へ行って」

彼が言うので、私は梯子伝いに、下へ進む。

梯子の終わりまで降りると、円形の小さな部屋になっていて、1つドアがある。

彼が降りてきて、ドアを開ける。

そこは、高さ2m位のトンネルになっていて、天井に等間隔で蛍光灯が点いている。

トンネルの下半分は、左右は通路で、真ん中に水が流れている。よく見ると、決してきれいとは言えない水。多分下水だろう。

その時、ここは、下水道なんだと分かる。

私たちが入ってきたマンホールは、下水道の管理用の入口みたい。

「こっち」

彼は私の手を引っ張り、通路を走る。

「出口、分かるんですか?」

「当然」

涼くんがそう言うなら、付いて行って大丈夫。

しばらく走ると、さらに大きいトンネルに突き当たる。高さは3,4m位ありそう。通路はトンネルの片側についていて、下水はナミナミと流れている。

「ちょっと待ってください」

ずっと走って、息が切れてきた。彼も一度立ち止まる。

でも、そんなにのんびりしていられない。

なぜなら、トンネルの片側から明かりと人の声が近づいてくるから。

「早っ。もう見つかった。なんで?」

彼が驚く。確かに下水道に逃げ込むなんて、普通はなかなか考えないから、時間を十分に稼げると思ったのだけれど。

彼に再び手を取られて、トンネル脇の走り出す。

しばらく走ると、トンネルが2つに分かれている。私は涼くんの進むままに付いて行く。

今度は3分岐があり、真ん中へ進む。

追いかけてきた人の声が聞こえなくなり、明かりも見えなくなる。

これで振り切れた。

「ちょっと休憩しませんか?」

立ち止まって、膝に手を置いて前屈みになり、息を整える。体育の授業以外でこんなに走ったのは、久しぶり。

「体力無いな」

アンドロイドと比べてという意味?それとも、平均的な高校生と比べて?

どちらと比べても、私は体力無い。

だから、言い返す言葉が思いつかない。

こういう時の口の悪さは、彼がいつも通りであることの表れで、勇気付けられる。

でも、休んでいる暇はないみたい。

今度は別方向から、明かりと数人の走る足音が聞こえてくる。

さっき私たちを追いかけてきた人たちが回り込んだにしては、早すぎる。とすると、別のグループ?

「やばっ。逃げるよ」

彼は私を持ち上げ、お姫様抱っこすると、再び一目散に走りだす。私と一緒に走っている時より、全然速い。

あっという間に、追いかけてきた人たちの気配がはるか後方へ消える。

トンネルの分岐が来ると、どれかを進み、再び分岐が来ると、またどれかを進む。

そうやって迷路みたいな地下の下水道網を走り抜ける。

でも、不思議なことに、私たちを追いかける足音や明かりが、すぐに追いつく。追い付くどころか、先回りされることもあり、すると、涼くんは大急ぎで走る向きを変える。

後ろから走る数人の足音が追いかけてくる。そして、次の曲がり角の先からも足音とトンネル内をボヤっと明るく照らす明かりが近づいてくる。挟まれてしまったみたい。

涼くんは立ち止まる。

誘拐犯じゃないよね、普通の工事の人達が追っかけているだけですよね。

そう祈るけど、分からない。ドキドキ心臓が鳴り、不安になる。

「ちょっと遠いけど、この辺りで良いか?離れてて」

彼は私を通路に下ろすと、コンクリート壁に向かってパンチする。

ガラガラッー

簡単に壁に穴が開く。壁の向こうは空洞みたい。

崩れかけた壁に手をかけて引きはがすと、バリバリッと人が通れるくらいの穴が開く。

「まさか、ここへ逃げると言わないですよね?」

「他に道がある?」

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