再会
何時間たったのだろう。倉庫内はもう真っ暗。
突然、倉庫の扉が開かれる。
外の薄明かりを背景に、誰かが、倉庫に入ってくる。いや、入ってくるというよりは、押し倒される感じ。
こちらに背を向けて、ドタッと倒れて、しばらく動かない。
恐る恐る、私は芋虫みたいに、地面を這いつくばって、近付く。
「あっ、涼くん!」
横たわっていたのは、涼くんだ。
「大丈夫ですか?」
私が声を上げると、彼はクルッとこちらを向く。
「あっ、比呂美さん」
そして、ちょっと力を入れて、手首のひもを引きちぎり、次に足首のひもを外す。
「紐、解けるのですか?」
「縛られた振りをしていただけ。こんなロープ、軽い軽い。ところで、一体、何があった?」
「誘拐されてしまったようです」
「それで、雲隠を持って来いということか」
彼は納得した。
「涼くんは、どうしたのですか?」
「僕は、電話の後、学校へ行って、巻物を取って、そのまま、京都へ来た」
と、事のいきさつを教えてくれる。
天龍寺に着くと、すでに閉館時間になっていた。
仕方がないから、周辺の小路に入り、天龍寺の裏庭辺りの外壁を飛び越えて、中に入った。
大きな池があり、室町風の庭園。もちろん、無人。ひっそりとしている。
時間の約束をしていなかったことを思い出して、このままここで待っていて良いものか迷ったが、しばらく待つことにした。
すると、ガサガサっと音がして、周囲の松林の中から数人の足音が聞こえた。足音は近付いてきて、涼くんを取り囲んだ。
見ると、全員、能面を付けていて、修験道の山伏のような服を着ていた。
「雲隠は、持ってきたか?」
1人が涼くんに尋ねた。
「ここにある」
手に持って見せた。
「よし。連れて行け」
雲隠を取り上げられると、涼くんは後ろ手に縛られて、目隠しをされ、車に乗せられた。
しばらく走って止まると、この倉庫に入れられた。