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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
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道端のバン

翌日、やっぱりどうしても桐生さんのことが気になる。それは謝りたいという気持ち。

「SNSのIDを聞いているから、メッセを送ってもいいかな?」

でも、ちょっと考える。

こういう少しニュアンスの伝わりにくい話、誤解を招きたくない話は、文字によるメッセより直接話す通話が良いと経験から分かる。本当は直接会って話すのが一番なんだけれど、今日は放課後にバイトまで時間がない。

また、時間稼ぎに会いに来たと思われるかもしれないのも気になる。。

「やっぱり、ホテルに電話するのが一番いいかも」

とても恥ずかしいけど、でも何もしないと、失って終わりとなるだけ。

「もし電話に出てくれたら、何て話そう?」

まず、涼くんが気絶させたことと、私が時間稼ぎに話していたことを謝らなければならない。

「そんなこと、気にしてないよ。それより、僕の方こそ、ウソをついてごめん。君の注目を浴びたくて」

なんて言ってくれて、何事もなかったように、初めて会った時のような雰囲気が続けばいいなあ。

「やっぱり、電話しよう」

学校が終わり、バイトに行く前に、歩道の端に立ち止まり、電話する。

「そちらに泊まっている桐生さんという方に、つないでいただきたいのですが」

「はい、少々お待ちください」

少し待たされた後、

「桐生様は、本日午前にチェックアウトなされております」

「あっ。そうなんですか」

ちょっと気になってたことを聞いてみる。

「あのー、付かぬことをお聞きしますが、その方は怪我とかしてませんでしたでしょうか?」

「怪我ですか?いえ、チェックアウトの時は、見た目はごく普通で、気付きませんでしたが」

良かった、大丈夫だったんだ。

安心した。

そして、私に何も言わず去って行ったのが、ちょっと寂しさを感じたけど、逆に吹っ切れた。

もともと私には分不相応な人だった。

私みたいな、ごく普通の、特別かわいい訳でもなく、何か特徴がある訳でもなく、むしろ、無いもの尽くしの女の子は、桐生さんに釣り合いが取れない。

最初は付き合っても、そのうちに飽きられる。

そうなってから後悔して傷つくより、早いうちに別れられて、良かったかもしれない。

バイト先へ歩き始める。

いつもの道、いつもの光景。

そして、また同じような、いつもの毎日。

ふと、頬に涙が伝わっているのに気が付く。

「やっぱり、きついです」

いつもと違う非日常に憧れているのに、いざ非日常が目の前に来たら、いつもの日常に逃げ込むなんて。

これじゃ、決して非日常は自分にやってこない。

本当は、傷ついて後悔するかもしれなかったけど、桐生さんともう少し過ごしたかった。


それから、バイト先のセイントマークへ向かって歩く。

今日、山田さんへ巻物を返そうと思っていたけれど、お休みしていた。多分、おじいちゃんのお見舞いだろう。

だから、巻物は、学校のロッカーに入れたまま。

バイトへ向けて学校を出て、道を歩いていると、少し前の道端にバンが止まっている。

特に気にせず、隣を通りすぎる。

すぐ後ろでスライドドアの開いた音がする。

次の瞬間、後ろから布を持った手が、顔の横に伸びてきて、私の鼻と口に覆いかぶさる。

まさか、自分が狙われているとは思わず、この人、何しているんだろう?と思う。そのまま意識を失う。

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