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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
32/157

ホテルのロビー

「今日、何かあった?」

そう言われて、はっと気づく。

「悪いことでは無いんですが。ちょっと変わったことというか、珍しいことがありました。バイト先に、桐生さんという大学生の人が来たんです」

少し彼が興味を持ち始めてくれた。

「とてもイケメンで、頭も良くて、来てる服のセンスも良くて、本当に滅多にいないような格好いい人なんです。でも、なぜかウソをついています。単に気を惹きたいだけだったら、桐生さんなら、普通にしていても全然魅力的なのに」

私が出した桐生さんのホテルの名刺を、彼に見せる。

「じゃ、聞きに行ってみようか?」

「こんな時間にですか?もう10時半ですよ」

「夜中に忍び込まれるよりは、マシだろう?」

「そうですけど。もし聞きに行ったとしても関係ないかもしれませんし、関係あったとしても知らない振りしたら、それまでですし」

「それは僕が調べる。比呂美さんはその男を引き付けて、時間稼いでくれればいい」

涼くんに促されるまま、もう一度着替えて、家を出る。

本当は、桐生さんにもう一度会える口実が出来て、ちょっとうれしい気もしているが、それは涼くんが一緒にいてくれるから。

自分は桐生さんに会いたいのか、会いたくないのか、はっきり分からない。重荷のような気もするけど、涼くんが一緒だと、勇気が湧いて、何でもできてしまう気がする。

歩いて15分ほどで、駅前のホテルに着く。

まだ煌々とロビーの明かりは点いていて、それなりに人がいる。

ソファーでくつろいでいる人や、数人で談笑している人、新聞読んでいる人など。

エントランスから入ると、ロビー横にカウンターバーがあり、数人がこちらを背に座っている。

よく見ると、桐生さんもバーの端で一人で飲んでいる。

「あっ、あの人です」

私は、小さく指さして、涼くんにそっと教える。

「じゃ、30分くらい話してて。その間に部屋、調べるから」

「えっー、ちょっと待ってください。一緒に話しを聞くのではないですか?そうだと思ってました。それに、勝手に部屋に入って良いのですか?」

「大丈夫。任せておいて」

一瞬、私は納得してしまう。今まで、彼に任せておいて、失敗したことはなかったから。

でも、今回は、今までとは、ちょっと意味が違う。

やっぱり、ここは帰るべきだ。そう言おうとした時、

「何かあったら、1207号室に内線電話して。ホテルなら、ロビーにいくつかあるはずだから」

涼くんはそう言い残すと、ロビー奥のエレベーターホールへ行ってしまう。

止めようか迷うけど、目立つと桐生さんに気付かれてしまう。

仕方なく、私はバーの端の桐生さんの方へ進む。

「こんばんは」

彼が振り返り、きょとんとした顔から驚きの表情に変わる。

「本当に、来てくれたんだ。嬉しいなぁー」

「来ちゃいました」

無理に作り笑いをして、でもウソをついている罪悪感から目を合せられず、無意識に視線は横を向く。

「まあ、座ってよ。何か飲む?ドライマティーニとかどう?」

「お酒はまだ飲めないです。ジュースやお茶で良いです」

彼はジュースを頼んでくれる。やがて、ジュースが目の前に運ばれてくる。

「今、高校生なんだっけ?」

「はい」

「学校はどう?楽しい?」

「そうですね、それなりに」

と、どっちつかずの返答をする。それから部活は何してるの?とか、勉強のカリキュラムの話とか、さらには中学の話とか。

私の話の中のちょっとした取っ掛かりを、そして、私が自慢したかったりして、もう少し話したいなという点を彼は見逃さずに興味深そうな顔で聞いてくる。だから、私はついつい話してしまう。彼はとても聞き上手。

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