空き巣?
バイト後、家への帰り道。
いつも通り、公園の中の小路を通る。空には満天の星空。
もっとウキウキのルンルンな気持ちになって良いにもかかわらず、私の心は重く沈んでいる。
私は小学校の時、いつも疎外感を感じていた。別に友達がいない訳ではないけど、どこか冷めていて、大人びていて、斜に構えていて、その頃から誰に対しても距離を取って付き合っていた。
それがずっと、常に、一時も休む間の無く、続いていた記憶がある。そして、年上のお兄ちゃんと遊んだ記憶は全くない。というより、そんな事実はない。あれば思い出として残っているはず。
だから、桐生さんはウソをついている。なんでそんなウソをつくのだろう?
こんな気持ちになるのなら、もっと単純にナンパしてくれれば良かった。そうすれば桐生さんはウソをつかずに済むし、その方がこちらも気が楽。
もう2度と、桐生さんには会わないだろう。
いやな気分のまま、自宅に着く。
家に入ると、涼くんの靴が、もう玄関にある。バイトから帰っている。
「ただいま」
私はドサッと床に腰を下ろし、カバンを放り投げる。
なんか疲れた。
家に上がり、制服を脱ぎ、家着に着替えるために、タンスの引き出しを開ける。
ごそごそと家着を取り出しながら、何か違和感を感じる。
全体的に、服の位置が違う。
私はそれほど神経質ではないけれど、今朝の引き出しの中の配置と違い、ちょっと気になる。
「涼くん、ここの引き出し、開けましたか?」
押し入れの中で充電中の涼くんは顔を出し、首を振る。
「開けてない」
特に気にせず、受け流す。
その後、宿題をしに居間へ行き、カバンの中からノートや教科書を出し、参考書を取りに部屋の隅のカラーボックスの所へ行く。
「あれっ、アクセサリーの位置が違う。涼くん、何か触りましたか?」
「触ってない」
別に触ってもいいんだけど、タンスの引き出しと2つ重なるのが気になる。
「空き巣?」
ふっと不安になり、家のお金関係のものが入っている冷蔵庫横の引き出しを確認する。
通帳、ハンコ、生活費、特に無くなっていない。
部屋全体を見渡してみる。他は特に変わりはない。
でも、なんか気持ち悪い。
「どうした?」
「気のせいかもしれないけど、朝といくつか物の配置が違うから、誰か触ったのかなあと思いまして」
「無くなった物は?」
「今のところ、無いです」
押し入れから出てきた涼くんが尋ねる。
「取られて困るようなものは、最初から無いんですが。でも、家の中に入られるって、ちょっと怖いです。もし寝てる時に、入られたりとかしたら」
彼の表情は相変わらず分からない。機械だから、共感というものが欠けてるのかもしれない。
「なぜ、今日はこんなに神経質で、怖がりなんでしょう?いつもだったら、大して気にしないのに。自分でもちょっと不思議です」