表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
雨の日のランデブー
3/157

何もない日常

「お先に失礼します」

私はドアを開ける。

外はすでに真っ暗闇で雨。10時。

バイト先のカフェ、セイントマークから傘をさして、外に出る。雨足が強い。

今日は学校の授業で、体育の授業があって良かった。

体育の授業のある日はスニーカーで登校可だから、今日はスニーカーを履いてきていた。だから、濡れても乾きやすい。ローファーだと、一度濡れると、なかなか乾かないし、色が落ちてしまう。

暗い屋外に出ると、ガラス窓越しの店内の煌々とした明るさが一際目立つ。

その明るさで、自分の靴や傘が見えると、どこかに隠れたくなる。

スニーカーは、履き古しで、全体的に黒ずんでいる。紐は結び目の部分が擦れて、ほつれ始めている。

傘は、ビニール傘。一度骨が曲がったけど、自分で元に戻した。完全には元に戻らないから、一本だけちょっと曲がっている。

そして、これが私が夜遅くまでバイトしている理由。

学校にかかる費用は、ほぼ自分で出している。公立だから授業料というものはないけど、いろんな積立てとか。例えば修学旅行の積立て。ノートなどの文房具や参考書も買う必要がある。

あと、毎日の昼食代や、そして大きいのが携帯の料金。

だから、土日も含めて毎日、夕方から閉店まで、近所のカフェでバイトをしている。


私は、お母さんと二人暮らし。

お母さんは、飲み屋のママをやっている。彼女曰くスナックらしい。

当然ながら、大した稼ぎは無くて、日々の食費と光熱費で、ほぼ消える。貯金はほとんどしてないし、出来るほどの余裕は無い。

夜遅く店を閉めて、日付けが変わって午前に帰る。そのままお店に泊まる時もある。最近泊ってくることが多い。

私の家は、木造築30年以上の古い2階建てのアパートの2階。間取りは1DK。

食堂と台所は一つになっていて、その隣に襖で仕切られた6畳の畳部屋。

台所のすぐ後ろの食卓で学校の宿題をするので、それが食卓兼勉強机。

寝るのは、隣の部屋。

小学校や中学の時は、自分の持ち物が安いものだったり、古いものをずっと使っていたりなど、後ろめたい思いがあった。

「あれ買ってほしい」「これ買ってほしい」

小さい頃私はよくそう言った。でも、結局買ってくれなくて、やがて買うほどの余裕が無いということが分かってきた。

そして、高校に入ると、何となく自分の先が見えてきた。普通に学校を卒業し、普通に地元のお店に就職しするんだろうな。

私の人生の選択権は私にはある訳が無い。

私の人生は始まる前にすでに終わってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ