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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
28/157

違和感

翌日の昼ちょっと過ぎ。私は学校で、涼くんはバイト。お母さんは午後からお店に行き、家には誰もいない。

私のアパート前に、若い男が来る。

ピンポーン

ベルを鳴らすが、誰も返事をしない。

人がいないのを確認すると、ポケットから先の曲がった針金を2本取り出す。

彼は立ったまま、腰の辺りで、その針金を玄関のカギ穴に突き刺し、鍵のシリンダーの一本一本の重さを感触で測る。その間、玄関扉の前に何くわぬ顔をして立ったまま、手だけをせわしなく動かす。

4本のシリンダーの重さからその長さを求め、もう一本の針金の先端を小さくジグザグに折ると、そっと鍵穴に差し込み、もう一本の針金と一緒に回す。

カチッ

音がして玄関の鍵が開く。

彼は周囲を見渡す。日中の住宅街は、意外と人通りがない。ましてボロアパートだから、余計誰も興味を持たない。

周囲に人がいないのを確認すると、ゆっくりドアノブを回し、ドアをギリギリ人一人通れるくらい開けると、さっと扉の間に身を滑り込ませる。

背後で、音もなく、玄関扉を閉める。

「せまっ」

小声でつぶやく。このアパートに、10代後半の男の子と女の子と、その母親の3人が暮らしていることは数日の張り込みで確認済みだった。

でも、狭い方が探し物がすぐに見つかるから、都合が良い。

土足のまま家に上がると、まず学習用品がまとめて置いてある部屋の隅のカラーボックスに向かう。

カラーボックスの上には女の子向けのアクセサリーなど小物が置いてある。10代の男女のうちの女は学生だろう。このカラーボックスの周辺だけ、妙に女子力が高い。

隠すとすれば、一番可能性の高いのはこの辺りだ。

付近を調べるが、お目当ての物は無い。

次に襖をあけ、隣の部屋を覗き込む。こちらは和室で、タンスや衣装ケースなどが置いてある。壁には洗濯物が干してある。女子用のジャージとか、下着とか。

タンスの中や、衣装ケースの中も、端から調べるが、無い。

衣装はどれも全部女物ばかり。

次に押し入れの中も。布団と、ここにも衣装ケースがあるだけ。

もう一度、居間のような食堂のような中途半端な部屋に戻る。冷蔵庫横の、いかにも貴重品が入ってます的な小物入れを開ける。

領収書やら、ハンコやら、そして現金が少々。通帳もある。開いてみる。残高9500円。

「少なっ」

彼はそれらには全く興味を示さない。

台所下の棚の中や、トイレ、ふろ場などを一通り見て回る。窓を開け、ベランダやその外壁も。

おかしい。何か変。

さっきから感じていた違和感がより大きくなってくる。でも、まだはっきり分からない。

探し物が見つからないのは、それはそれでめんどくさいことではある。でも、それとは別に、何か胸騒ぎがする。

もう一度、部屋を見渡す。それから隣の和室も。

特に何かを隠せるような場所は無い。ごく普通の狭い部屋。いかにも女子が住んでます的な。

女子?

そういえば、子供は男の子と女の子2人じゃなかったっけ?

男の子の方は?

そう、さっきから感じていた違和感の正体が分かった。男の子の存在感がこの2つの部屋には全く無い。アイドルのポスターだったり、スポーツ系の漫画だったり、男物の服だったり。

数日の張り込みで、10代の男の子と女の子の2人がここに住んでいるのは確認済みだ。でも、男の子の生活臭が全く無い。存在が完全に無視されている。

なぜだ?

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