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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
26/157

和風邸宅にて

「無事、雲隠を入手いたしました。まずはご一報を」

「ご苦労。残りの雲隠れも入手できるよう、精進せよ」

御簾の向こうから、声が聞こえる。

広々とした室の中央に、一人の男がスーツを着て、正座をして座っている。

寝殿造りの建物の一室。

床は畳、柱は朱色、壁は上半分は白の漆喰と門帳が部屋の3方を囲み、下半分は黒い格子が壁代わりになっている。

部屋の正面は、1段高くなって、その奥は下まで一面御簾がかかっている。その中がどうなっているか、全く見えない。

「下がってよい」

「はっ」

深々とお辞儀をすると、背後の壁代へ移動し、そこで再びお辞儀をし、部屋を出る。

部屋を出ると外廊下があり、角を曲がって廻廊を進み、階段から地面に降りる。

そこは一面の日本庭園。

白い砂利が敷き詰められ、所々大きめの岩と、松や梅などの樹木が配置されている。少し離れたところに大きめの池があり、池の真ん中に小さな島がある。

男は日本庭園を横切ると、車寄せに向かう。

1台の車が止まっており、その助手席に乗り込む。運転席には、別のスーツを着た男が座っている。

特に何を話すわけでもなく、車は動き出す。

「雲隠を2つ。ここまで来るのは、長かった」

「そうですね」

運転席と助手席、隣に座っているが、この2人の関係は対等ではなく、その気の遣いようから、ボスと子分だと分かる。今乗り込んできた助手席の男がボスで、運転席で待っていた方が子分のだ。

「残る1つが手に入れば、藤原道長の秘宝の場所が分かる」

「でも、なんで、紫式部の源氏物語に、道長の宝のありかが、書かれているのですか?」

車は日本庭園の敷地を出て、一般公道に入る。車外の風景は、いつのまにか雑居ビルなどの街中に変わっている。

「紫式部が、道長の愛人だったというのは有名な話だ。じゃなきゃ、下級貴族の娘が皇后の家庭教師なんか、なれるわけがない。当時、日本のほぼ全土を支配していた道長が、その富を愛人の紫式部に残すのは当然だろう」

「そうですね」

「源氏物語の主人公、光源氏のモデルの一人は道長だ。特に後半はな。光源氏は出家して寺に籠るストーリーだが、道長も晩年は出家して寺に籠った。道長は先が長くないと悟ると、その富をどこかに隠し、隠し場所を式部に教えた。式部はそれを源氏物語の雲隠、つまり光源氏が死ぬ巻に書いたんだ。だから、雲隠だけは巻物なんだ、他は冊子だがな」

「はぁー、古い話ですね」

「道長が晩年にすごした法成寺の跡地は、今は公立高校になっているんだが、その改築工事の際に、雲隠の巻物が1つ出てきた」

「そこに、宝の地図が載ってたのですか?」

「いや、雲隠は3つ揃えないと地図が完成しない。で、白道会の連中に探させてて、先週もう1個見つかった。残り1個あれば、地図の完成だ」

「あー、ベトナム窃盗団から買い取った話ですね」

「この宝の正当な継承権は我々にある。だから、赤の他人に奪われるのを防ぐために、先手を打たねば」

「そう言えば、白道会の連中から巻物を受け取った時、気になる話、聞きました」

「気になる話?どんな?」

「巻物に興味を持ってる二人組がいた、と」

「二人組?どんな?」

「それが子供らしいです。高校生くらいだって。それがムチャクチャ強いらしくて、白道会の若いもん4人、返り討ちらしいです。男女のカップルらしいです」

「そいつら、雲隠に気付いてるってことだな。彼らの手がかり、何か無いか?」

「ドライブレコーダーに顔が写ってると言ってました。取り寄せますか?」

「そうしてくれ。こういう場合の適任者がいる。まずは穏便に進めたいからな」

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