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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
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夕食

涼くんが後輪を持ち上げて、前輪のみ転がしていく。

その子の家は、さっき行ったグェンさんのアパートの並びの別の棟の1室だった。

その子が家の戸を開け、何か叫ぶと、母親らしき中年女性が出てきた。何語か分からないけど、その子と女性が2,3言話すと、女性は日本語で、

「たすけてくれて、ありがとう、ございます」

と言う。

彼女も東南アジア系の濃い顔で、このアパートはもしかしてベトナム人ばっかりが住んでるのかもしれない。

「ごはん、たべましたか?」

「ご飯?夕食?いえ、まだです」

周囲は結構暗くなっている。

「だったら、いっしょに、たべていってね」

「大丈夫です。もう帰ろうと思っていたところですので」

「そんなこと、いわないで。ねっ、ねっ」

愛嬌の良さと、押しの強さに負けて、そして、この時間に帰ったら家に着くのは夜遅くになので、外食にするか、夕食を抜くかの選択になり、外食は高いから結局抜くことになる。だから、単純に夕食もらえるという魅力に抗しきれない。

「じゃ、ちょっとだけ」

と、ずうずうしくその女性に促されるまま、その子に家の玄関をくぐる。

「お邪魔します」

靴をそろえて上がると、すぐにそこが居間。

壁の上側には子供の服が一面にハンガーで干してあり、下側はいろいろな荷物、多分学校のカバンやら、買い物袋やらが乱雑に重なっている。

部屋の真ん中に、背の低いちゃぶ台があり、その周りに、中年男性、多分父親だろう、と、子供が4人。だから、さっきの自転車の子は5人兄弟。年齢的には、上もいるし、もっと下もいる感じで、3番目くらいかな。

ということは、この家に7人で住んでいる。居間の隣にも部屋がありそうだけど、隣の部屋の広さは分からない。外から見た隣の家の玄関との間隔から、間取りは1DKからせいぜい2DK。私の家よりも狭そう。

私のアパートも結構狭いけど、お母さんと女2人だから、まあどうとかなっている。

ちゃぶ台のすぐそばに、付きっ放しのテレビがあり、ガヤガヤうるさいけど、家族間の会話もそれに劣らず喧しい。

私が中年女性に続いて居間に入ると、その騒々しさがふっと消えて静かになり、テレビの音だけが聞こえる。

女性がちゃぶ台の男性に何か話して、

「さー、さー、ここ、どうぞ」

とちゃぶ台の方を指さす。男性や子供が横にずれて、私たちが座れる場所が空く。

みな、肩が触れ合うくらいにギュウギュウに座っていて、私たちがちゃぶ台に付くのが心苦しい。

私と涼くんが恐る恐るちゃぶ台に付く。

自転車の子は、早速食べ始める。

「ぱぱ」

と中年男性を指さす。

「まま」

と、次に台所にいるさっきの女性を差す。

「にいに」

と、2人の子供を指さし、

「おとうと」

と残りの2人を指さす。

「こんにちは」

と言いながら、私と涼くんは、それぞれに軽く会釈する。

自転車の子が、身振り手振りで、自転車が溝に落ちたとか、涼くんが片手で持ち上げたとか、何語かでベラベラと話し、みんなが「うん、うん」と頷く。

「ほんとう、ありがと」

父親がそう言い、

「たべてください」

と、いろいろお惣菜を勧める。

「じゃ、いただきます」

と、私はお蕎麦みたいな白い麺から手を付ける。多分フォーだろう。鶏がらの薄味で、パクチーの香りと風味が効いている。もやしが乗っているけど、茹でてない生のようで、ピリッとパンチがある。

「美味しいです。生のもやしって、初めてです」

ちゃぶ台にまた、にぎやかな喧騒が戻る。

母親がちゃぶ台に、新しいお惣菜やおかずを持ってくる。

鶏肉の蒸したものとか、米粉の麺とか、全体的に薄味だけど、美味しい。辛みそみたいな香辛料があって、好みで付ける。

涼くんは、ほとんど口を付けない。付き合い程度に、お茶を飲む程度。

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