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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
藤原道長のレガシー
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オークション

明日の用意をしようと、カバンに教科書を詰めたりしていたら、後ろでガタンッと音がする。

振り返ると、涼くんの顔がちょっと引きつってる。

「どうしたのですか?」

食卓の上を見ると、私のジュースのコップが倒れてる。そして、ぶどうジュースが巻物の上にもろにこぼれている。

彼は茫然としている。

「あー、拭かなくちゃ」

私は急いでタオルでジュースを拭きとるが、ぶどうジュースだけあって、色が黒く濃く、落書きのようなランダムな模様が全く見えなくなってしまった。

あまり強くこすると破れそうで、ちょっと軽く触る感じでしか拭き取れない。

そうこうしているうちに乾いてしまって、巻物末尾の模様は完全にブラックアウト。

「つい、手が当たってしまった」

一応、彼は謝っているつもりなのだろう。

「明日、山田さんに何て謝ろうかしら?」

涼くんは、アンドロイドなのに、うっかりというか、何か時々抜けている。

「おじいちゃんの最後の生きがいって言っていたのに、どうしよう。完璧に嫌われちゃいます」

「悪かった」

いつも私を小バカにして、半分あきれたように私に接する涼くんが、意外にあっさり謝る。ちょっと驚き。

「まあ、仕方ないから、明日謝ってきます」

彼は渋い顔でうつむく。

折角いろいろ手伝ってくれたのに、言いすぎたかも。ちょっと悪かったかな。

「何かお詫びに付けない?」

「お菓子とかですか?」

「末尾の文で、巻物を3つ集めろとあったので、これと同じものがあと2つあると思う。だから、それを1つ探して、2巻返せば、少しは詫びになる。本当は3巻集められれば良いけど、それは大変だと思うので、少なくとも2巻なら何とかなりそう」

「巻物なんか、売ってんですか?」

半信半疑で携帯で検索してみる。

すると、結構出てくる。

「へぇー、こんなに売りに出ているんですね。誰が買うんでしょう?それに意外に安いです」

江戸時代くらいのなら、1000円台からある。

見た目もいかにも古そうで、本格的。

これなら、山田さんに古い巻物を1つ付けて謝るというのは、良いかも。でも、同じくらいの価値のあるのでないと意味がない。

”巻物、平安時代”で絞ると一気に少なくなる。”巻物 源氏物語”や”源氏物語 古文書”など、いろいろ試してみる。

しばらくいろいろ試してみる。

同じくらい古いのはなかなか無いなあ、と思っていると、あるオークションサイトの中古品売買で、ヒットする。

でも、それは骨董品の目録の中の1項目で、骨董品全部一括で50万と、とても手が出ない。セット内容は屏風や扇子、ちゃぶ台などどれも骨董品なんだけど、その巻物以外は興味がない。

巻物の写真をアップして見てみると、山田さんの巻物に似ている。

「説明は、”古いものです”としか書いてないです。これじゃ分からないですね」

私は早速出品者に問い合わせをする。

しばらくして返信が来るが、出品者も分からないとある。

涼くんに意見を求める。

「この巻物、山田さんのに似てるんですが、買うべきでしょうか?でも、他の骨董品とセットで50万ってありますし」

「バラして売ってくれるか、聞いてみたら?」

「あっ、なるほど」

私は出品者にバラ売り可能か問い合わせる。

しばらくすると返信が来て、郵送では不可だけど、手渡しで持って行く分には良いと書いてある。出品者は群馬だ。

群馬なら隣の県だから、日帰りで行ける。

価格を聞いてみると、3000円と言ってくる。

ちょっと高い。困った。出せないことは無いけど、出すと今月の自分用の予算がほとんど無くなってしまう。

普段、お財布にだって3000円は入れない。せいぜい2000円が限度。

涼くんが私の困った顔を見て、何かを察したのか、聞いてくる。

「この巻物、3000円です。ちょっと高いなあと思って、買うの迷ってます」

「僕が出す。ジュースこぼした詫び。バイトしているから、金はある」

「うわぁー、助かります。本当に良いですか?ありがとうございます」

こうして、週末に群馬まで行くことになる。

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