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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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縁日

それから再びいつも通りの生活が続き、数週間して地元の十日市というお祭りの日になる。

参道の周りにたくさんの露店が並ぶ。たこ焼き、クレープ、チョコバナナや、射的、金魚すくい、ヨーヨー投げなど。

本来は商売繁盛のための祭りで、熊手を買うのがメインなのだけれど、私は祭りの雰囲気を味わうのと、夕食代わりの食べ物を探しに出かける。

いろいろ見て回ると、ケーキ屋さんが出店していた。珍しい。

たまに市内の店が出店する時があって、オレンジ堂という人気のプリン屋さんがお祭りの時に出店した際は長い行列ができていた。

私はケーキ屋さんの商品をざっと見て、お母さんの分と自分の分のシュークリームを計2つ、近くの中年の店員さんに頼む。その人は別の店員に声をかける。

「お会計、お願いします」

私はカバンの中の財布からお金を取り出して、店員さんに渡す。ふっと顔を見ると、それはソフィアだった。

あれ以来、ケーキ屋さんの店の方へは行かないようにしていたけれど、祭りに出店しているとは気が付かなかった。

お互い一瞬あっという感じになって、彼女はプイッと横を向いて視線を合わせないまま商品をこちらへ押し出す。

あっ、元気になったんだ。

白馬で見た時より顔色も良く健康的な雰囲気。化粧でやけどの痕は全然分からない。

パティシエの白の帽子と制服が金髪とコバルトブルーの瞳にすごく合う。

元々パティシエはヨーロッパの物だから、その服が白人に合うのは当然かも。こうして見ると、健康的な彼女は客観的にも素直に美しい。特にコバルトブルーの瞳は横から見ていても吸い込まれそう。

私は彼女に話しかけたかったけれど、彼女はそれを望んでいなさそうだし、私のことを嫌っているみたい。

それに今は仕事中でそんな暇もなさそうだから、シュークリームを受け取るとそのまま露店を出る。

数歩進んでつい思わず振り返ってしまう。すると、彼女が私に向かってあっかんべーをしていた。

???

あっかんべー?

今時、小学生でもそんなことをしない。誰が教えたのかしら?それとも向こうの国では今でもしているのかしら?それに意図が分からない。

でも、ちょっと嬉しかった。私を覚えていてくれて。

彼女には計3回殺されかけたけれど、私はそういうのはあまり気にしない。むしろ彼女はとてもかわいそうな人という印象の方が強い。だから彼女が元気になって、私にあっかんべーをするくらいの気力が戻ったことが分かって安心する。

そして勝手に私の中で彼女を友達認定してしまう。

彼女とは境遇が似ているから、きっと友達になれるはず。

また機会があれば、話しかけてみたいな。

そんなことを思いながら、ガヤガヤとうるさい人込みの中を他の屋台を覗いて歩いていった。

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