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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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万事休す

「止まれ」

突然大声がして、私服の男が近くに停めてあった車から降りてくる。

私服?警察じゃない。どこの組織?

ソフィアはそんなことを思いながら、3人は埠頭へダッシュする。後ろから敵は平気で発砲してくる。

埠頭の入り口にコンテナが置いてあり、3人はその脇を通り過ぎると、部下の2人が任務最優先のマニュアル通りにコンテナの陰に隠れ、後ろから追ってくる敵に反撃する。ソフィアは援護を彼らに任せ、ボートに向かう。

埠頭の真ん中辺りに桟橋がある。ボートまで100mほどの距離。

後ろで2人の部下と敵が撃ちあいを始めるが、部下の1人が倒れたのが確認できた。

左手に黒革のカバン、右手に拳銃を持ち、ボートまであと20mという時に、突然足が絡まり、前にずっこける。

何でこんな時に!

と自分の左足を見えると太ももから出血している。撃たれたらしい。アルコールのせいで痛みを感じなかった。

後ろを振り返ると、埠頭入口の援護の部下は2人とも倒れ、敵がこちらがへ走ってくる。

ソフィアは敵に向かって発砲するが、アルコールのせいで照準がうまく合わない。とにかく乱射する。

急に右肩に激しい衝撃を受ける。右肩を撃たれたみたい。

その反動で手にしていた銃が吹き飛び、海にポチャンと落ちてしまう。

こうなったら這ってボートまで行くしかない。この距離ならまだ間に合う。動きの利く右足と左手で四つん這い状態でカバンを引きづりながらボートへ向かう。

この任務は成功した。そして敵はその妨害に失敗した。

どこの組織か知らないけど、私たちの方が一枚上手。

日本の田舎組織に私たちを取り締まれるはずがない。姿勢を低くして撃たれないでボートに乗りさえすれば、確実に脱出できる。

そう思って、ボートに近づいて行った時。

ヒューッと音が聞こえ、突然目の前で巨大な水柱が上がり、同時にパワーボートのカーボンファイバー製の船体の破片が飛び散る。水柱が治まると、パワーボートの破片に付着した燃料が激しく燃えている。それから残骸の船首が高く持ち上がり、船尾から沈み始める。

何が起こった?

海面のはるか遠くを見ると、日の出とともに、沖に戦艦らしき船影が見える。ぼんやりと砲塔がこちらを向いているのが見える。

砲撃された?日本の船?情報漏れ?

パワーボートが無い以上、海上へ脱出できない。ソフィアはがっくりとその場に倒れ組む。

そっか、沖合に脱出したところで、海上で日本の戦艦が待ち伏せしてたのか。

ここから離岸できたとしても海上で砲撃されたし、もし高速でうまく砲撃をかわして逃げられたとしても、レポ船は遅くて逃げきれない。レポ船は日本の戦艦の砲撃を恐れて、私と無関係を装い、他人の振りをして私の接舷を許可しないだろう。どっちみち詰んでいた。

そう分かったが、特に残念だとか、悔しいだとか、そんな気持ちは全くない。むしろやっと楽になれたという開放感さえ感じる。

まあ、良いか。日本へ来た本来の目的は達成したし。K文書の任務なんか、実はどうでも良い。そう、全部どーでも良い。

ボーっとしていると足音が近づいてきて、誰かが自分の背中を力いっぱい踏みつける。銃のスライドを引き、カチッと銃創に弾丸を充填する音が後頭部のすぐ上で聞こえる。

もう終わりだな。

そう思った時、聞き覚えのある女の声がする。

「ちょっと待ってください」

あれっ、あの声は?

思わず振り向く。

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