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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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ランデブー

「僕、彼女の行先分かるかも」

突然、涼くんが口を開く。

「島に行くときに、ソフィアと、それが彼女の本名なんだけど、一緒に来たから。レポ船とのランデブーは明後日って、彼らが話しているのを聞いたよ」

「レポ船とのランデブー?それはきっと沖合で自国の船と合流して、その時ブツを渡すか、自分も乗り込む計画ということだろう。で、何で君が彼女と一緒にいたの?」

不思議そうに天上さんは涼くんを見る。

「比呂美さんを助けに行くために、ちょっと協力してもらって。僕たち、以前からお互いに知っている仲らしくて、僕は彼女を知らないのだけど、彼女は僕を知ってるみたいで」

天上さんは不思議そうに涼くんを見て、いろいろ聞きたそうだけど、プライベートなことなら聞くべきでないし~と思案顔。

「ふーん、まっ、良いか。それはいつ聞いた話?」

「今日は何日?」

天上さんは腕時計を見て日付を言う。

あっ、この人、腕時計している、珍しい。

「じゃ、昨日。だからランデブーは明日になるね。でも、場所や時間は分からない」

「そっかー。それだけだと、分からないなー」

「後、下田に倉庫があると言っていた。僕は南伊豆から彼女の船に乗せてもらったんだけど、その船は下田から出航したと言っていた。乗った時点で船に彼女の仲間が数人いた。だから、下田に倉庫兼アジトみたいなものがあると思う」

「おっ、それ良い情報だね、助かるよ」

それから彼らは少し話したけど、天上さんはもう他に有用な情報はないと判断したみたいで、また階段を上って船の上の階へ行く。

私たち二人だけが、後部デッキに残される。何となく気まずくて話しかけにくい自分に気付く。

さっきの涼くんの言葉、ソフィアが涼くんを知っているって、どういう意味なんだろう?以前、産業廃棄物場の粉砕機の上で、彼女は涼くんに恨みがあるようなことを言っていた。そして彼女の顔半分の大きなやけどの痕。

あのやけどが涼くんのせい?

彼がそこまで恨まれていると思うと、その理由を彼に聞きづらくて結局今までそのことに触れないで来たけれど、急に知りたくなる。私の知らない別の涼くんの面。過去の涼くん。

私は人付き合いで、相手の全部を知らなくても良いと思ってきた。誰でも知られたくない面はあるはずだし、その面を無理に知ろうとしたら相手が離れて行ってしまう。

それなら知られたくないことには深入りせずに、相手と付き合いを続けた方が良い。

なぜそう思うかというと、私自身が人に知られたくないことがあるから。それは母子家庭だったり、家が貧乏だったり。

だから、そういうことに深入りしてこない人と友達になった。彼女たちは何となく状況から私の事情を察しているけれど、あえてそれを直接面と向かって聞いてきたりはしない。もし事情を知ったとしても私から離れたりはしないと思うけれど、でも私はそういう事情を表には出したくない。

表の付き合いだけというと軽薄な印象を受けるけれど、相手も感情があるから嫌なことはお互いに避けたいし、聞きたくないはず。

そういう付き合い方をずっと今までしてきて、彼に対しても最初はそうだった。

どんな過去があるのか、何を考えているのか、話し相手になってもらう時はいろいろ話すけれど、それはその場その場の話題に対してであって、肝心なところ、本心には本能的にノータッチだった。

でも、今、涼くんの過去を無性に知りたい。なぜだろう?自分の知らない所で苦しんでいるのだったら、助けてあげたいから?ちょっと違う。単なる独占欲?近い気もするけれど、もう少し悪気はないような。

「涼くんの過去、話を聞かせて欲しい」

彼はこっちを振り返って、私をじっと見る。

「きっと、軽蔑されちゃいそうだから」

「しない、約束する」

彼はどうしようかなーと頭を傾ける。

そして、ゆっくりと言葉を選びながら、話し始める。

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