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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
無意識のインフェルノ
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別ルート

「良かった。あの子が離ればなれにならなくて」

「君も通ったら?もうこのフロアも煙がすぐに充満するよ。こんな扉、僕が押し開いてあげるから」

「でもそうすると、ホールの中に煙が一気に流れ込んでしまいますよ。そうしたら、大勢の人が煙に巻かれてしまう」

彼は訳が分からなさそうな顔をする。

「君はどうするの?」

私は?どうしよう?分からない。

ただ、この扉を開けると大勢の人に迷惑がかかることは分かる。だからこれ以上、私の都合だけで、この扉を開けられない。

煙は階段からモクモクと上がってくる。きっと、火元は階下なんだろう。

天井の煙の層が、さっきより厚く濃くなっている。

「君のことが良く分からない。君は」

そこまで彼が言いかけた時、私は煙を吸い込んで、ゴホゴホッと咳き込んむ。

逃げられそうな所を探しに、薄暗闇の中を歩き始めるが、数m先しか見えないので、どっちへ行けばよいか分からない。

さらに天井の煙の層が厚くなってきて、息が出来なくなるのも時間の問題みたい。

急に怖くなる。死なんて自分には全然関係ないことに思っていたけれど、急に目の前に迫ってくると、意外にはっきりと恐怖を感じる。

「まだ死にたくない」

彼の手を握りながら、私は大粒の涙をポロッと落とす。

「早めに逃げれば良かったのに」

こんな危ない状態なのに至って冷静で、やっぱりアンドロイドには人間の気持ちは分からないのねと確信する。今の危機的状況が全く分かってないんだ。

アンドロイドだから息もしないし、それ以前に死という概念すら無いんだろう。

「まあ、君は命の恩人だから」

そう言うと、何か考えているみたいにちょっと目をつむる。

「何をしているのですか?」

「ネットからこのビルの間取りを確認してる」

それから私の手を引っ張る。

「こっち」

「どこ行くの?」

特に返答はない。

「会場のホールに入った方が安全ではないですか?」

「ホールもすでに、煙が充満しているから、今から行っても同じだよ」

暗闇の中をグングン進んでいく。

「目、見えるの?」

「スターライトだから、このくらいの明るさなら見える」

「どこ行くの?」

もう一度聞く。

「とりあえず、ビルの窓際まで」

転ばないようにスマホの明かりで足元を照らしながら、私は手を引かれていく。

しばらく進むと、扉のようなものに突き当たる。

”Staff Only”

彼は扉を押すと、施錠されておらず、扉は開いた。

職員用の通路のようで、真っ暗闇の中に、飾り気のない殺風景な床と壁が続く。ここにも煙は入ってきているが、さっきまでいた会場周辺の通路よりは若干少ない。そのまま通路を進む。通路の左右には時々ドアがあり、倉庫とか、会議室とか、プレートがかかっている。

もう少し進むと、ドアの下の隙間にうっすら明かりが差し込んでいる扉がある。

「ここ」

彼はその第2備品室とかかれたドアのノブを回し、室内に入る。

6畳くらいの狭い部屋だけど、奥に窓ガラスがあり、太陽の光がギラギラと注ぎ込む。

「まぶしい」

久しぶりの日光に、つぶやくと同時に安心する。

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