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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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カーチェイス

すると反対車線の先に対向車が来るのが見える。対向車が来たらダンプも自分の車線に戻るだろうから、その隙に対向車の更に右、路肩から追い抜こうと、対向車が来るのを待つ。

「あの車の向こう側を走って」

対向車が近づいてきて、ダンプとすれ違う直前に急に道の右の路肩にハンドルを切る。

これで対向車がダンプとソフィアの車の中間に入り、邪魔は出来ない、追い越し成功と思ったのも束の間、ダンプもハンドルを右に切り対向車に正面から衝突。対向車は宙で一回転し道から外れて原野にはじけ飛ぶ。そのままダンプはソフィアの車に体当たり。

ソフィアの車はガードレールとダンプに挟まれて、フロントガラス、サイドガラスが割れ、ガードレール側の扉から火花が上がる。

ソフィアが手にしているサブマシンガンを割れたサイドガラスからダンプに向けて乱射するが、ダンプは全く動じない。車体下部のタンク部分に鉄板を張り付けて防弾仕様にしてある。結局ソフィアの車はブレーキをかけ、再びダンプの後ろに戻る。

今度はダンプの後ろからタイヤを狙い銃を撃つが、全くパンクする気配が無い。

「何なの?あのタイヤ」

「きっと、工業用の特殊仕様タイヤでしょう。普通の弾じゃ、貫通すらしませんよ、隊長」

「じゃ、シャフト部分を狙ってみるわ」

ソフィアは窓から身を乗り出すと、ダンプの後輪のシャフトの中心辺りに狙いをつけサブマシンガンを発砲する。が、トラック後方にも鉄板が張り付けてあり、シャフトに当たらない。

まず、防御の鉄板を外すために四隅の溶接部分に狙いを定めて撃つ。2つの溶接が取れ、鉄板がぐらつき始める。

「もう少しで外れるわ」

次の溶接場所を撃っていた時、車全体に後ろからガンッと衝撃が走る。振り返ると後ろから別のダンプがぶつかってくる。

「新手?」

何度か体当たりしてきたダンプは、じりじりと車間を狭め、前のダンプと挟んでソフィアの車を挟みつぶそうとする。

ソフィアは今度は後ろを向き、後部座席の2人も同時に後ろのダンプのフロントガラスへ3人同時にマシンガンを撃つ。が、弾は反射される。

「防弾ガラスか。手回し良いな」

ダッシュボードを開け手りゅう弾を取り出すと、ピンを引き、後ろのトラックに投げ込む。手りゅう弾はコロコロっとトラックの下に吸い込まれると、ボンッという音とともに金属片をまき散らすが、トラックは走り続ける。

「床下も補強してるのね」

前のダンプは減速し、後ろのダンプは加速し、ソフィアの車は挟まれミシッミシッと音を立てはじめる。ソフィアの車はハンドルもブレーキも効かなくなり、トラックに挟まれて運ばれている感じ。

前方に右カーブが見え、その左側は崖になっている。前後のダンプがジワジワと左に寄り、ソフィアの車を崖に落とそうとする。

「ちょっとまずいな」

ソフィアはそう言うと、サイドガラスの無くなった窓から身を乗り出す。

「撃つな」

後部座席の2人に手ぶりも含めて伝えると、車の屋根に上る。そして、そのまま後ろへ駆け出しダンプのフロントカバーへジャンプして飛び移る。

側面を伝ってサイドドア側に回り込み、ドア横のはしごでダンプの運転席の屋根に上る。運転席の後ろ側に換気や採光用の小さな窓がある。

「不用心ね」

ソフィアは腰にぶら下げてきた手りゅう弾のピンを外すと、その窓から投げ入れる。大急ぎで側面のはしごに飛び移り、フロントカバーを伝って今度は自分の車のトランクにジャンプして戻る。

その瞬間、ダンプのフロントガラスが一瞬で内側から白く曇る。運転席内で手りゅう弾が爆発し無数の金属片がフロントガラスに内部から当たったのだ。

後ろのダンプはコントロールを失い減速し、徐々に左に寄り始めガードレールを突き破ると、車道左側の崖に転落していく。

ソフィアの車に、再びハンドルとアクセル、ブレーキの自由が戻る。

道は大きく右にカーブしており、道の右側に広がる原野を突っ切れば、トラックを追い抜くことが出来る。原野の地面の状態はそれほど悪くなく、十分速度は出せそう。

「右の原野に入って。近道して」

「да(ダー)」

運転者は返事をしてハンドルを右に切る。車はガタガタッと揺れ出すが、みるみるダンプを追い抜かす。

するとダンプも原野に入ってくる。後ろにものすごい砂吹雪を巻き起こしてソフィアの車に向かってくる。ダンプの方が前を進んでいたから、ダンプがソフィアの車のななめ前方から突っ込んでくる。

運転手が衝突を避けるために、ハンドルを徐々に右に切る。すると道から遠ざかり追い抜かせない。

「良いからそのまま進んで」

ソフィアが言い、車は左へハンドルを切り、ダンプと刻一刻と近づく。

「ぶつかりますよ、隊長」

運転手の言葉を無視して、ソフィアは手りゅう弾を3個、手に持つ。

「さっき、外からは手りゅう弾、効かなかったですよ」

後ろの男がソフィアに声をかけるが、ソフィアは気にしない。

「あの窪地みたいな所に向かって」

ソフィアの指示で、運転手が窪地へ向かう。ダンプも窪地に向かって猛進してくる。

「右」

窪地の直前でソフィアの掛け声で、車はとっさに右に急カーブ。ソフィアは次々と手りゅう弾のピンを抜き、3個連続で窪地の底に向かって投げ込む。手りゅう弾は窪地の底で爆発し粉じんを巻き上げる。

ダンプは窪地の粉じんに突っ込み、そのまま乗り越えそうな雰囲気だったが、急に車体がガクッと前のめりになり、バランスを崩す。徐々に後輪が宙に上がり、実際は一瞬の出来事なのだけれど図体があまりにも大きいため、ゆっくり横転するように見える。

「穴を掘るためにも、手りゅう弾は使えるわ」

横転するダンプを後ろに、ソフィアたちの車は車道に戻る。

「ずいぶん時間を取られたわ。まだ追いつける?」

「はい、隊長」

車はさらに加速して、金塊と私を乗せたバンを追いかける。

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