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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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意外な助っ人

飛ばし屋の乗用車が道の真ん中で横向きに駐車している。そして、数人の男女が車を盾に身を低く構えている。手に何かを持っている。拳銃。

それからバンと先導車の2台をめがけて、一斉に撃ち出す。先導車の男たちが窓から銃を向け応戦する。彼らも銃を持っていた。

バンのフロントガラスにひびが入り、運転手と助手席の元議員が思わず身を低くする。

「とにかく走り抜けろ」

元議員が叫ぶと、運転手はアクセルを踏み込む。

通せんぼしている車と路肩の隙間の大きい後ろ側に突っ込む。

ドンッという音とともに車に衝撃が走り、乗用車が弾かれる。その隙間をバンはグイグイ進み、通せんぼの乗用車を後にする。

「こいつに仲間がいたのか?」

元議員が私の方を向いて言う。

私には涼くんしかいないけれど、彼はまだ縦穴の中かしら。

誰だろう?金塊を狙っている他の人たち?

彼らは私の唯一の助けかもしれない。彼らがこの車を止めて金塊を奪ってくれれば、その過程で私を見つける。私がいることは想定外だし、私がいても何のメリットもないからきっとおいて行くはず。だから、私は助かる。

心の中で、どこの誰だかわからない襲撃者たちの成功を祈る。

先導車はまだ襲撃者の車と応戦していて、その隙に金塊を積んだバンが進む。先導車は最初から捨て駒になるつもりだったのかしら?

ちょっと意外。

銃声の音は段々小さくなり、はるか後ろに通り過ぎてしまう。

「こんな一般公道でぶっ放すなんて。乱暴なやつらだ、信じられねえ。堅気じゃねえ、どこの組だ?」

運転手がぶつぶつ独り言を言う。彼の足が震えている。一方、元議員は肝っ玉が据わっていて、嫌そうな顔、迷惑そうな顔はしているけれど、震えてはいない。

「巻いたか?」

「いやー、分かりません。やつらの車はまだ走れるでしょうから、追ってきやすかも」

「そうか、じゃ、あいつらに頼むか」

元議員は胸から携帯を出すと、どこかへ掛ける。


その頃、先導車の男たちは、飛ばし屋と思われた襲撃者たちと撃ち合いをしていた。

しかし、両者の距離は30m以上離れていて、拳銃ではなかなか当たらない。

彼らの拳銃はあくまでも威嚇用または不意打ちの刺客向けであって、遠距離での銃撃用ではない。さらに彼らは銃撃の訓練も受けていない。専ら何となく相手がいる方向に向かって威嚇のために撃つという使い方。それに実弾の値段は安くはなく、そう簡単に実弾を撃つ機会はない。

一方、襲撃者たちは撃ち方のフォームや照準の付け方が無駄がなく完璧だった。先導車のやくざを一人撃ち、二人撃ちと着実に倒していく。

先導車には4人乗っていたが、2人倒された時点で、相手がただの素人ではないということに気付く。だから威嚇のために乱射しながらしゃしゃり出るという方法から、襲撃者たちが金塊を追うために車に乗ろうと背を向けた瞬間を狙って撃つ戦法に変え、車のボディーのすれすれの所に隠れる。

「めんどくさいな」

襲撃者のリーダーっぽい女性が独り言を口にする。

彼女は車からライフルを取り出すと、残り2人のうちの1人のやくざの頭部、ボディーにほぼ隠れごく一部が見えているだけの箇所に照準を合わせて引き金を引く。狙われたやくざは後ろに吹っ飛びながら、頭から血を噴出する。

最後の1人になったやくざは形勢不利を察知し大声で威嚇しまくる。命中率の高いライフルでは拳銃に勝ち目がないと悟ったから。

「ゴッラァー、誰に向かって刃向かっとるんじゃー。どこの組に立てついとんのんか、分かっとんのか!後から詫び入れた位で収まらっ」

最後の彼も頭部に銃撃を受けて、吹っ飛ぶ。

「すぐに追って」

襲撃者4人は車に乗り込む。女性一人に、男性3人。そして全員白人。

男性は一人はひげ面で、二人はひげはないもののクルーカットで、男3人ともいかつい体格。

女性の方は金髪で目は青い。でも全く表情がなく、死んだ魚みたいな目つき。

彼女はルスラナ名義で日本に潜伏している、本名はソフィアだった。

「ちょっと時間を取られたわ。日本人がこんな強硬手段を取るなんて」

4人を乗せた車が金塊を積んだバンを猛スピードで追い始める。

「追いついたら、タイヤを狙って。横転させて」

助手席のソフィアが後部座席の2人に指示を出す。2人は、マシンガンの弾倉の充填を確認する。

しばらく進むと、大型ダンプが前方を走っている。

「のろい車ね。抜かして」

ソフィアが運転手に言うと、ひげ面がアクセルを踏み込み、対向車線に出てダンプを追い越しにかかる。するとダンプはソフィアたちの車に向かって右へ幅寄せしてくる。

「блин(ブリン)」

運転手がクソッと罵り、急ブレーキをかけギリギリ接触せずに済む。しかい前にのろのろ運転のダンプが立ちはだかったまま。

ダンプが対向車線に行ったので、ソフィアたちの車が左から追い抜こうとすると、今度はトラックは左に寄せてくる。

何度も隙を見て追い抜こうと試みるが、何度やってもソフィアたちを先に行かせない。

「このトラック、彼らの仲間ね」

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