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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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軽井沢

数週間バイトをして、やっと軽井沢までの交通費が溜まった。

その週末になり、朝早く家を出る。

お母さんには前日に、知り合いと山に行くから翌朝早く出るとだけ伝えた。

「あらっ、珍しいこともあるのね」

と軽い反応。

もっと心配されたり引き留められたりするのかと思っていたけれど、全くそんなことはなかった。

考えてみれば、私はもう高校生。友達同士で長距離バスや電車で旅行したり、部活の合宿で数日泊まるということは良く聞く話だから、私もそのくらいしても良いのかもしれない。むしろ今までバイトが忙しいという理由と、部活に入っていなかったために、外泊の経験が全く無かったのが珍しいのかも。

お母さんが寝ている横からそっと家を出て、電車で横川に到着。そこからバスに乗るのだけれど、バスは1時間か2時間に1本という本数。だから、軽井沢への行きはバスに合うように横川着の電車のダイヤを考えた。

無事にバスに間に合って11時前に軽井沢に到着。

軽井沢って、高級別荘地というイメージだったけれど、駅はかなり小さくて、北口の駅前は意外と田舎っぽい。反対に駅の南口は大きなアウトレットがあって、人が多くて華やかな雰囲気。

じわじわっと南口へ行ってみたい気持ちになる。

普段見慣れないものとか、かわいいものとか、いろいろ見て回るだけでも楽しそう。たとえ買えなくても、ウィンドーショッピングっていう幻想、非日常の世界に一瞬でも浸れるだけで十分。

ちらっと涼くんの方を見えると、彼は私の意を汲んだよう。

「えー、買い物しにわざわざこんな遠い所まで来たんじゃないんだけど。欲しいものがあれば、ネットで買えば」

はい、確かにそう。

帰る前に、もし時間があれば南口に寄りたいという私の希望であって、今日軽井沢に来た一番の目的は滝の調査だから、まずはそっちを片付けなくては。

蛇返しの滝と白糸の滝へ行くには、ここから草津温泉行きのバスに乗る。

まだ出発まで時間があるので、駅前のコンビニで昼食用のお弁当を購入。アウトレットに行くほど時間が無いので、北口の交差点近くのお土産物屋でちょっとだけぶらぶらして時間をつぶす。

軽井沢で有名な滝はまず一番は白糸の滝だから、まず先にそちらに行くことにする。

バスに乗り25分ほどで、白糸の滝のバス停へ着き、下車。

かなり有名な観光地みたい。車で来た人のために広い駐車場がある。お土産物屋さんもあるし、綺麗な遊歩道が整備されていて、白糸の滝まで道順の標識が出ている。

観光客が大勢いて、ぞろぞろと標識に従って小川沿いの遊歩道を進む。ほぼ平らで快適。もっとやぶや雑草が生い茂る山道を進むのかと思っていた。

遊歩道沿いの石垣には一面コケが付いていて、そのコケの湿っぽさが何ともいえない気持ち良さを誘う。時々小鳥のさえずりも聞こえ、行楽地でのハイキングを満喫。

しばらく歩くと、滝が縦に2つ重なっているのが見えてくる。

あれが白糸の滝?違うみたい。

この滝でも十分見応えはあるけれど、その奥からさらに大きな水の流れる音が聞こえてくる。

さらに坂を上ると、そこに劇場のステージみたいな幅広の滝がある。高さは3m位とそんなに高くないけれども、横幅が50m以上、70mくらい。水しぶきが大きな半円のアーチ状の池に降り注ぐ。横に広く水が流れ落ち、その様子はまるで無数の白い糸みたい。水しぶきがモヤっと霧状になって絹みたいになめらか。

すごい壮観。

金塊が見つからなくても、この滝を見れただけでここまで来た甲斐はあったと思える。

良く見ると、滝の水は上流の川から流れてきているのではなくて、岩の隙間から湧き出ているみたい。

看板の説明を読んでみると、この辺りの地形は浅間山の火山の溶岩で出来ているので、地面の中に空洞が多くあり、そこを雨水が流れて地表に出てきた所がこの白糸の滝と書いてある。だから、突然地面から水が湧き出ているように見えるのね、と納得する。

見とれていないで金塊の隠し場所を探さなくちゃ、と気づくも、周りに観光客が多くて、何もできない。

「観光客、多いね」

「山田のおじいさんは、滝の裏と言っていたよね。裏って、どういう意味だろう?」

「多分、滝の落ちる水の流れの向こう側の壁のことでは?」

アーチの奥の方の滝は良く見えないけれど、左右の端の滝の壁は遊歩道から近いから良く見える。

でも、見た感じは全く自然の岩石にしか見えない。深緑のコケに覆われているけれど、ゴツゴツした形は自然のものに見える。

滝の左の方から奥の壁を観察する。ざっと見てみたけれど、どう見ても普通の岩石。

まあ、何となくそんな気はしていたけれど。パッと見て人工物だと分かれば、すでに誰かが気付いているはずだから。

残るはアーチ中央部の池の奥の方の壁。遠くてここからでは良く見えない。でも、見るためには池の中に入らなければならないし、周囲には他の観光客が大勢いる。

「池の奥の方を見たいけれど、観光客が多いから、減るまで待つ?」

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