表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
126/157

チラシ

それから数日は、悶々とした気持ちの日々が続く。

誰がどういう形で関わっているか分からないまま、時間だけが過ぎていく。でも、どうやって調べればよいか、きっかけさえつかめない。

バイトがオフのとある週末。

ベッドに横になって、携帯のカメラで撮った、議員さんの奥さんに見せてもらったスケジュール帳の写真を眺める。

政治家だから当然だけど、彼はすごくいろんな人に会っている。

一番多いのが会食。スケジュールを探すと、経団連の誰々とか、地元の支持団体の会長とかいろいろある。他に省庁へのヒアリングというのも多い。ある時期だけ急に小委員会とか、審議会というスケジュールが増えるのは国会の会期中なのかもしれない。

ベッドの横になりながら、写真を順番に眺める。

国会議員というのは、地味で退屈な仕事に思える。こんな仕事をしている人が狙われることがあるのかしら?やっぱり狙われたのは、私の方?

ここ数日、私の身の回りに何も危険なことは起こらなかったから、もしかしたら私と涼くんの生活は意外と大丈夫かもしれない。

ふっとそんな思いが頭をよぎる。そして、日々の忙しさとテストの準備などで、段々事件のことを忘れ始めていた。


ある日、学校から帰ってきて自宅のポストを覗くと、チラシが何枚か入っている。ほぼ全部ゴミ箱へ捨てるのだけれど、1枚なぜか気になる。

”ライフセンター浦和”

どこかで聞き覚えがある名称。チラシを見てみると、老人ホームの宣伝。施設拡張が完了したため、追加で入居者募集とある。

私もお母さんも、まだまだ先の話だから、老人ホームに縁は無いと思うけれど、どこかでこの名称に聞き覚えがある。

どこだったけ?

気になりながら家に入り、宿題を始める。

だけど、頭の片隅に、さっきの老人ホームの名称がこびり付いて勉強に集中できない。仕方がないから、気分転換にベッドに横になる。本当なら外へ散歩へでも行きたいけれど、そんな時間は無いし。

食器棚からお菓子を取ってきて、ゴロゴロしながら食べる。まったりした気分になる。また宿題に続きをしよう。その前に携帯の確認でもしておこう。

そう思って携帯をカバンから取り出し、メールやチャットのチェック。特に急いで返信する必要のものは無い。ついでに、この前の議員さんのスケジュール帳の写真も見てしまう。パラパラパラとめくって、何気なく眺める。

その時、写真の中にライフセンター浦和の文字。

あっ、ここだったんだ。

さっきから頭の片隅に引っかかっていたトゲが取れる。

漆丸議員は数か月前に1度訪ねていた。そして、その1か月後に暗殺された。

何か関係があるのかしら?たまたま偶然という可能性もあるけれど。

私のイメージでは、老人ホームにいる人たちは自分で生活できないような後期高齢者と、その生活の世話をする介護士の人たち。

漆丸議員さんは文部科学省だから、仕事柄は関係ないはず。

なぜ老人ホームへ訪問したのだろう?

身内がいたのなら、定期的に訪問するはずだけれども、この日以外は一度も訪ねていない。自分や奥さんの入所の検討には早すぎる。

ちょっと気になる。

再びチラシを見てみると、浦和駅からすぐ近くで歩いて行ける距離。浦和まで大宮から電車で10分くらいだから、往復で半日かからない。行ってみれば、誰に会ったのか、なぜ老人ホームへ行ったのか、分かるかもしれない。

テストが終わったら、気分転換に行ってみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ