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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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ネットのニュース

家に帰りネットのニュースを見ると、“漆丸議員、狙撃され死亡”とタイトルが表示されている。

えっ、あの議員さん、亡くなってしまったの。

確かに出血はしていたけれど、そんなに多くないように見えたから、怪我で済むと思っていたのに。

にわかには信じられない。そんな簡単に人が死んでしまうなんて。

ニュースサイトに動画が載っている。グラウンドの後ろにいたマスコミの人が撮った映像みたい。クリックする。

今日の全校集会の表彰式の様子。

グラウンドの台の上で、私と議員さんが向かい合って、議員さんが表彰状を持って読んでいる。

突然、議員さんがよろける様に倒れる。急いで駆け寄ってくるお付きの人たち。それから先生たちのわずかな悲鳴とざわざわとなる生徒たち。

そして、ボーっと立っている私。

私や周囲の人の顔はモザイクが掛かっているけど、議員さんの前で立っているのは私で、私だけ場違いのようにボーっとしている。

記事を読み進めていく。

「漆丸議員は東京大学卒業後、商社勤務から政治家秘書へ転身し、衆議院議員に当選後・・・文部大臣政務官を務めていた・・・

さいたま市内の高校を訪問した際に狙撃された・・・

検死の結果、死因は出血性ショック死・・・

近隣の住人による不審人物の目撃証言があり、目下捜査中である・・・

また、周囲の人の話によると、銃声は聞こえなかったという・・・」

この高校生というのは私。

そして、あの時、私の頭のすぐ近くを何かが飛ぶような音がしたから、あれはやっぱり銃弾だった。

でも、なぜあの議員さんは撃たれたのだろう?

政治家にそこまで恨みを持つ人の心境が分からない。

どこかの外国の独裁国だったら、その動機を理解できる。政治家を暗殺しないと政権が変わらないから。

でも日本のような選挙のある国では、スキャンダルを起こした政治家は次の選挙で落ちるはず。それも3年とか4年とか結構短い期間で選挙があるのでなおさら。さらにマスコミの目があるから、プライベートなことでも何を報道されるか分からない。日本の政治家は結構窮屈で神経を使う職業だと思う。だからわざわざ暗殺する理由が分からない。

記事の中に、漆丸議員について

“有志の超党派の議員と終戦時の行方不明隠退蔵物資を調査していた・・・”

と、ある。私が佃で見つけた金塊がこれの一部であったので、漆丸議員が出てきたのだろう。

もしかしてこれが、議員さんが狙われた理由?

一瞬そんな考えが頭をよぎる。いくらなんでもそんなことはないでしょう、とすぐに反対の考えが浮かぶ。金塊目当てに暗殺なんて、映画みたいだから。


翌日、いつも通りに登校し、クラスの自分の席に座る。

嫌な思い出がよみがえる気がして、グラウンドは見たくないから、窓から視線をそらす。でも、授業中にふっと窓の外を見てしまう。

グラウンドでは台の周辺に立ち入り禁止のテープが張られ、数人の警察の人が現場検証をしているのが見えた。

あの場所で議員さんが撃たれた。でも、今思い返してみて、全く実感がわかない。翌日になると、授業も先生も生徒も、何も変わらずいつも通りに進んで行く。

人が死んでも、こんなものなのかな?

さらに翌日にはグラウンドの立ち入り禁止テープも外され、何事もなかったかのように過ぎていく。

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