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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
無意識のインフェルノ
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驚きが連続

3連休で、翌日も学校は休み。お母さんは昨日もお店に泊まりで帰宅しなかった。

朝、朝食を食べていると、彼が押し入れから出てきた。

「クリスタルが1個、見つかった。南に向かったドローンから発見の連絡があった」

まず1個見つかって良かった。もし見つからなかったら、スクラップにされるかもしれないから。

「早速取りに行ってくる」

「場所はどこ?」

「都内の池袋」

ということは電車で行く?

でも、埼京線の過密の中で、アンドロイドだと気付かれないかしら?満員電車にはルールというか“しきたり”みたいのがあって、それが分からないとかなり顰蹙を買う。

もしアンドロイドだとばれて騒がれたり注目を浴びたら、もうここへは戻ってこれなくなってしまう。

「私も一緒に行って良い?」

「えっ、別にいいけど」

ESは少し驚いた風。

私は急いで朝食を食べ終わると身支度をし、彼と一緒に家を出る。

アパートの階段を降りると、目の前の道に見慣れない真っ赤なスポーツカーが停まっていた。ESが近付くと、ピーッピーッと音を立てロックが解除される。

彼は右側のドアを開け、

「乗って」

と言う。

えっ、車で行くの?この車はESの?それにそっちは運転席側で、私は運転できないのに。

と思いながらドアから中を覗き込むと助手席。外車だから運転席は左側だった。

指示されるままに車に乗り込む。

すごく座席の位置が低くて、沈み込む感じ。視線の高さが歩行者よりも低い。もちろん自転車よりも。普段外でこんな低い視線にならないから、いつもの自宅前の道が見慣れないものに思える。

彼が乗り込んでエンジンをかける。ブローーンという聞きなれない低い音とともに、キュッと加速し、座席に押し付けられる。

この車、すごく軽い。

家には自家用車は無いけれど、学校の遠足とかでバスとかに乗ったことはある。でも動き出しはもっとのろのろーという感じだった。

産業道路から吉敷町の交差点を通り、新都心西ICから高速道路に入る。時速100km近くで高速のカーブを曲がっても、道にピタッと密着する感じで揺れ一つ感じない。

「この車、何ていうの?」

「ラ・ヴォワチュール・ノワール」

聞いたことのない名前。

どこの国の車だろうと携帯で調べるとイタリアと出てきた。

じゃ、聞いたことない名前なのも仕方がない。

記事中に1500馬力、8000cc、16気筒と書いてあって、それらの数字がどのくらいの性能か分からないけれど、普通の車よりすごいのは確か。

さらに記事を読むと、価格が14億と書いてある。

14億?

「この車、どうしたの?」

「会社支給」

会社支給だと、こんな車の乗れるのかしらと、びっくり。

首都高5号線から荒川を超えて都内に入る。東池袋料金所で降り、地道を少し進んでぐるっと回り、アネックスビルの地下駐車場に入る。

「この近く雑居ビルの屋上にクリスタルがある。ここで待ってる?」

滅多に都内に出てこないし、せっかくだから一緒に行く。

地上に出て、大きな通りを渡る。

場所的には、ここがいわゆる乙女ロード。

初めて来た乙女ロードを見渡してみたけれど、そんなに乙女っぽくないというのが第1印象。ごく普通のオフィスビルの谷間の通りだった。外から見る限りはビルの中のお店までは分からないから、余計にそう見える。でもちょっとだけ自分と同じくらいか少し上の世代の女子が多いかも。

サンシャイン60通りをESと並んで駅の方へ歩いていく。

人ごみは、大宮の北銀座と比べて、同じくらい。だから都内に来ても、都会だーという感じはあまりない。ただ北銀座の方が歩道が狭い。

そんなことを考えながら歩いていると、

「すみませーーん、ちょっとだけお話良いですか?」

と、白のジャケットに紫のシャツ、金のネックレスに茶髪の20代前半くらいの男の人が声をかけてくる。

「もしかしてモデルとかされてます?そういうの、興味あります?」

キャッチに捕まるほど、地方から出てきた雰囲気を醸し出していたつもりはなかったので、ちょっとショック。

無視して歩き続けると、

「すぐ終わりますから、1分だけ」

としつこい。

それでも、無視してESの手を引っ張って歩くと、

「格好いいですね。言われません?」

と続く。

格好いい??

この人は何を言っているのだろう?

私は声をかけてきた男の人を見ると、その人の視線の先はES。

えっ?

彼は立ち止まって、考えているよう。

「モデルとか、興味ないですか?」

ESは状況を全く理解できていないようで茫然としている。

「名前、何て言うの?」

「ES」

「イーエス?どんな字、書くの?」

「アルファベットのEに、アルファベットのS」

今度はキャッチの人が、ちょっと意味が分からないという様に呆然とする。

私は思わずESの手を強く引っ張る。

「興味ないので、結構です」

そのまま、その場を早足で歩き去る。

ESがアンドロイドだとバレるのではないかと冷や冷やしていたけれど、ここまで離れればもう大丈夫。

でも、都内って男が男をナンパするの?

そんな発想なかったけれど、ESならそれはあり得るかもと思った。

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