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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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謎の金属

「気になる?取ってこようか?」

そう言うと、彼はひょいっとフェンスを乗り越えて、葦のような水草が生えている小さな島のような所に飛び乗った。

水中に手を伸ばして入れごみ袋の先をつかみ、引き上げようとした。ごみ袋はなかなか動かないみたい。さらに手を水の奥に入れると、袋の底から持ち上げるようにしてすくい上げた。

片手で持ち直すと、再びフェンスに向かってジャンプして、フェンスを乗り越え、私の目の前に戻ってきた。

彼が片手で持っているごみ袋のような麻袋は水に濡れてびしょびしょで、泥だらけ。

もう一方の手でそっと袋の口を開けると、中はほとんど泥だけど、その奥に長方形の重しみたいな物があった。彼は指先で泥を除けた。

ツルっとした黄色の見慣れない金属。

私も指先で、もう少し広い範囲の泥をどけてみた。

遊歩道の街灯の明かりで、うっすらと金属の色を認識できた。キラッと黄金色に輝く。

パッと見、金の延べ棒のように見える。

でも、きっとレプリカだろう。本物の金の延べ棒がこんな所に落ちているはずが無い。

金属の表面に、複雑な、今は使われていない漢字の刻印が見えた。旧字っぽい。

「これ、何だろう?」

彼は首をかしげた。

「洗ってみようか?泥だらけだと、よく分からないし」

周囲を見渡すと、高層マンションの間の中庭のような所に小さな小屋が見えた。建物の雰囲気から、公衆トイレっぽい。

そちらに向かった。やっぱりトイレだった。

彼が袋の中からそっと延べ棒を取り出し、トイレの入り口横の水道でざっと泥を流した。すると、まばゆく輝く金の延べ棒がトイレの蛍光灯に照らし出された。

大きさは750mlのペットボトルくらいで、それを平らにして長方形にした感じ。

「これ、偽物?刻印とか、とても凝っているけれど」

「純度は分からないけど、本物っぽく思えるな。だって、すごく重いもん」

「え、そうなの?」

私が手に取ろうとすると、

「気を付けて。とても重いから。両手で持って」

彼が片手で持っているから、軽いと思っていた。

延べ棒の下に両手を入れて、まず彼と二人で延べ棒を持ってみた。

ずっしりと手に沈み込む感じ。

「じゃ、離すよ」

彼がそっと手の力を抜くと、私の両手にずっしりと重みが加わった。

「ちょっとごめん。やっぱり私には持てない」

私一人では、とても無理。かなり重いことに気付いた。

学校の陸上部の部室に鉄のバーベルが置いてあって、陸上男子が時々トレーニングと言ってそれを持ち上げたりしていたけれど、あれが確か3㎏か5㎏だったと思う。それよりも比べ物にならないくらいに重いから、この延べ棒はそれ以上、10㎏くらいありそう。

「重い偽物っていうこともあるかも」

「そうかもね。だったら、どうしよう?記念に持って帰る?」

「いえ、一応届けよう」

「偽物かもしれないんでしょう?」

「偽物なら偽物だったで良いから」

袋も軽く洗って、再び延べ棒を袋に入れ、彼に持ってもらった。

携帯で近くの交番を探すと、ちょっと歩いて進んだところにあった。

「あっちに交番があるみたいだから、一応行ってみよう」

周囲は完全に夜になっていた。街灯の明かりで暗くはないけれど、人通りが昼間と全く違い、誰も歩いていない。こんな都心なのに意外と夜が早い。

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