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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
雨の日のランデブー
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残酷な立場

いろいろ話したいけれど、どこまで聞いていいか分からないし突然聞くのも不躾な感じがするし、いろいろ話題を探す。日中彼がしていたドローンについてなら良いかもしれない。

「探していたものは見つかりましたか?」

彼は両掌を上にあげる。

「全然」

「もし聞いて良ければ、今日飛ばしたドローンからどんな風に分かるのですか?」

「全然良いよ。そうだねー、ドローンから無線で直接僕の頭の中に連絡が来るのだけど、外から見る分にはどう通信しているか全く分からないからね」

彼は少し考えて、

「そうだ、PCとか何かある?それで僕の頭の中を見せられる」

私は学校で配られたノートPCをカバンから取り出す。

食卓の上でノートPCを起動させると、彼は指の先端でPCを触る。

何もキーボードやマウスを触っていないのモニタにWindowが4つ出てくる。

「今、僕とPCを接続している。この4つのWindowが4台のドローンからの通信。この表示は4台とも今は着陸していることを示している」

とモニタを指さす。

「ちょっと飛ばしてみようか?」

と彼は言うと、Windowの1つにコマンドの文字列が数行出てくる。

「今、1台を離陸させた。搭載のカメラの映像を出してみる」

Windowの横にもう一つWindowが出て、そこには上空からの繁華街の夜景が映し出される。映像の角度が上下左右に変わると、映し出される景色も繁華街の東西南北に切り替わる。

歩いているカップルにズームする。女性が男性の腕に抱きつきながら頭を肩に乗せている。男性は会社帰りらしく、スーツを着ていて胸の襟章もはっきり認識できる。

「すごい。こんなに見れてしまうのですね」

私はあまりの性能の良さに感心してしまう。

「顔認識も出来るから、彼らの氏名もすぐに調べられるよ。ちょっと試してみようか?」

と彼が言い、Windowに複数のコマンドが流れた時、モニタの右上に“割り込み”と表示され、別のWindowが開き、PCから音声が聞こえた。

「ES3、応答せよ。現在の任務状況を報告せよ」

急に彼の表情が険しくなる。相手は人間の声でなく機械で作られた音声だけれど、その語調からES3に指示を与える立場だと分かる。

彼が音声で答えると、それがWindow上で文字になった。。

「目標クリスタルを輸送機より入手したものの、脱出途中で分離散逸。現在日本の中央部平野付近にて、ドローンにて電磁発振元を探索中」

「発見見込みは?」

「不明」

「随分のんびりしているな。スポンサーはそんな悠長には待ってくれない。スポンサーに逃げられれば、お前はスクラップ処分だ。そうでなくてもお前は所詮試作品。性能が悪いとなった時点で廃棄される。そこの所を覚えておくのだな」

相手は一方的にそう言うと、ぷつっと通信が切れWindowが閉じる。

スクラップって壊されるっていう意味?今の仕事が出来なければ、壊されてしまうということ?

彼を見ていて、全く人間と同じように思えていたから、1回のミスで壊されてしまうなんて残酷に思えた。

ESは特に反応もなく無表情だけれど、その無表情さを見ていてかわいそうになってくる。もし初めてこういう扱いをされたのならば、うろたえたりショックの表情を顔に表すけれど、そんな表情を全くせず無表情のままであることがこういう扱いに慣れている気がしたから。

「大丈夫?」

「別に。もともと試作品はそんなもんだから」

この諦めみたいな、なげやりさ。

すごく分かる。私みたいだから。

私はまだそれに抵抗しようという意思が少しだけだけれど残っている。でも、彼にはそれが全く無くて、私のさらに先を行っている気がする。

彼と私はすごく境遇が似ている。似た者同士。

無性に彼を抱きしめたくなった。でも、突然そんなことしたら彼がびっくりするだろうから実際には行動に移せない。

彼はそのまま無言で押し入れに入り、充電し始めた。その姿がふさぎ込んでいじけているみたいで何か声をかけてあげたいけれど、同情していると思われるのも嫌だろうし結局声をかけられなかった。

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