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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
高度1万mからのダイブ
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輸送機にて

薄暗い。

でも、真っ暗ではない。ぼんやりと物の輪郭が見える。視界全体が赤みがかってる。

非常灯と書かれたライトが小さく赤く光っている。

目の前には、いくつか荷物がある。結構大きな荷物だ。

ちょっと離れた所に、金属の棚がある。棚にも荷物が載っている。

荷物はどれも、ロープで床や棚に固定されている。

ここは、普通の居室ほど小さくもないけど、倉庫ほど大きくもない。天井は少し低いが、細長く奥行きがある。

急にふわっと床が持ち上がり、その直後にストンっと下がる。

床が不安定なのは、なぜ?乗り物の中?

一方の壁だけ少し湾曲している。多分、そこが乗り物の外壁。

ガーーというけたたましい空調の音がする。オフィスであれば、仕事に集中できないくらいの大きさ。

室内は空調の音が響き渡るだけで、誰もいない。


突然、荷物の影から、ムクッと何かが起き上がる。それから、すくっと立ち上がる。

比較的細身だ。若干のあどけなさを醸し出している。子供?それにしては背が高い。170後半から180くらい。

髪は、フワッとして、肩にかからない程度のちょっと長め。


音を立てないように慎重にそっと足を進める。棚の荷物と床の荷物を一つ一つ確認する。

何かを探している。

やがて、ある荷物の前で止まる。

ジュラルミン製で、少し大きめのアタッシュケース。床に2本のゴムバンドで固定されている。前面の液晶に、0000と4桁のデジタル数字が表示されている。

そのシルエットは、荷物の前に膝をついて、かがむ。

片手を液晶の上にかざすと、4桁の数字が一斉に猛烈なスピードで乱数を刻み始める。

1桁ずつ数字が別々の値で止まり、4桁全部の数字が止まると、カチッと音がする。

シルエットは二本のゴムバンドを外すと、荷物を開く。


中はます目になっている。一つの区切りに、キラキラと光る、3cmくらいの薄いピンクの半透明の結晶が入っている。

宝石のよう。だけど、宝石にしては少し無機質すぎる。

装飾品の価値を決めるのは、宝石本体より金属の土台や宝石に対しての細工であり、注ぎ込まれている高度な技術。原石の価値は意外に低い。

すると、ここにあるのは、あまり価値のある宝石には見えない。

シルエットの手が区切りの端から端へスーっと横に動いて反対側に達すると、一つ下の区切りに移る。そして、また端から端へ向かう。

その動きを数回繰り返し、ある結晶の上で止まる。

その結晶の先をつまみ、区切りからスッーと引き上げ、ズボンのポケットに入れる。

ジュラルミンケースを閉めると、シルエットは立ち上がり、部屋を見渡す。

出口を見つけ、歩き始める。


コックピット。

貨物室内の積み荷のロックが解除されたランプが点滅する。

「おい、積み荷が開いてるぞ。貨物室だ」

パイロットが無線機に向かって叫ぶ。

壁一枚挟んだ後ろの乗務員室に、屈強な黒づくめのスーツの男が4人、壁に固定された簡易シートに座っている。全員クルーカットにサングラス。

コックピットを守るボディーガードのよう。

リーダー格の1人がパイロットから通信を聞き、無線機を耳から離す。

「貨物室に、侵入者だ」

全員が一斉に立ち上がり、一人が壁のロッカーを開ける。

中から銃を取り出し、皆に配ろうとすると、リーダー格の男が横から口を挟む。

「銃はダメだ。機体に当たると被害が大きい。スカンガンを使え」

彼は、銃をしまうと代わりにスカンガンを取り出し、全員に渡す。

彼らはコックピットのすぐ後ろから後方まで広がる荷物室に警戒して入る。


シルエットは、通路に出る。

通路の片面に一定の間隔で窓があり、窓の外は夜。雲が右から左へ高速で流れる。

ここは飛行機の中。

窓から月明かりが射し込む。

シルエットの正体が月明りで見える。カーキ色のパンツに黒の長袖のシャツ。パンツは足首でキュッと締まっている。

動きやすさを最優先した格好。

顔は、涼しげで、かつどこか物憂げでなのだけれど、肝心の性別が分からない。

パッと見ると、美少女に見えるが、髪型と服装から男の子に見える。

シャツの下にうっすらと感じられる肉体の輪郭は、適度な脂肪でふっくらとしたものではなく。細身で胸がない。

少年、だろう。

片手に、少し大きめのリュックのような荷物。

その荷物に両肩を通しながら通路を歩き、機外へ通じる搭乗口の前で止まる。

リュックの両肩の2つのベルトを胸前でフックでつなぎ、さらに腰回りもリュックのベルトで固定する。

ゴーグルをおでこ辺りに被る。

搭乗口横のパネルには、緑色で“close”と表示されている。

パネルに手をかざす。一瞬、間があって、次の瞬間、パネルは赤く“open”と表示を変える。

それから、搭乗口の大きなレバーに手をかけ、力一杯回す。


コックピットで、機の左舷後方の搭乗口のロックが解除された警告灯が点く。

「左の一番後ろの出口だ」

操縦士は、無線機に向かって叫ぶ。

無線を聞いた四人の黒づくめは、スタンガンを片手に、貨物室の荷物の間を、機の後部に向かって走る。


少年は搭乗口のレバーを最後まで回しきり、扉の下の取っ手を持ち、持ち上げる。

扉の下にわずかな隙間ができると、ゴーーっという凄まじい轟音と共に、空気が機内から機外へ吹き出される。

気にせず、扉を上へ持ち上げる。

眼下に雲海が広がり、満天の星空の斜め上に巨大な満月が輝く。

人が1人通れるくらいまで開ける。

外からの風圧が機内にも入り込んでくる。

少年がゴーグルを目にずらそうとした瞬間。

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