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お母さんはなんだか怒っている様な勢いでお兄ちゃんに詰め寄っている。

なんだか怖い。



「この手紙はどこから持って来たの?」


「…知り合いに頼まれたんだよ。」


「知り合い…、その人の名前は?」


「…マオさん」


「…知らない名前ね」とつぶやくとお母さんは考えるように黙った。


「……………この差出人。『佐藤葉子』はあなたの叔母さんなの。」


「え!?叔母さんって大分昔に亡くなったって!?」


「……本当はいなくなったの。こことは違う遠いところへ。」


お母さんは頭を抑えながら、イスに座った。


「お母さん怒ってるの?怒らないで?」


「怒ってないわ、怒ってない。ただビックリしたの。もう会えないと思っていた相手からの手紙があるなんて。」


そういうとお母さんはぎゅうっとわたしを抱きしめた。わたしもぎゅうっとしてポンポンと背中をやさしくたたいた。


「ほ、本当に、この名前は父さんの妹の名前で、この住所は、お婆ちゃんの家の住所?」


「…翔。あなたお婆ちゃんの家の住所しらないの?」


「っ知らないよ!手紙なんて出さないし!年賀状だって、母さんが出してるだろ!それに『佐藤』って名字も全国1位の名字なのに自分と関係があるなんて思わないよ!」



「……お父さんが帰ってきたらまた話しましょ。晩ご飯の仕度するわ。」


「あ、このカメラ!マオさんから頼まれたんだけど!」


「急いで現像してきて!まだ店は開いてるでしょうし、そんなに時間もかからないはず!」


「わ、わかった!」


ドタドタとお兄ちゃんがカメラとお財布をもって出て行った。

なんだか大変なことになったみたい。

『おばさん』って近所の『おばさん』とは違うよね?

ムムムと考えたけど分からなかったので大人に任せるとする。




※※※※※※※※※※




お父さんも帰ってきて、お兄ちゃんが持って帰ってきた写真を全員が眺める。


「幸せそうだな…。」


「そうね…。」


マオちゃんと女の人とマオちゃんと同じ角がある男の人、多分マオちゃんの家族なんだと思う。写真を見ながら目に涙を浮かべている。

もちろんわたしは空気のよめるオンナなので大人の涙はみないふりをしておく。





「…母さんたちは、叔母さんが異世界に居るのを知ってたの?」


「…ええ、そうね。葉子は…叔母さんは私と友達だったの。学校の帰り、一緒に帰っていたんだけど、突然あの子の足元が光り出したと思ったらパッと消えていったの。どこを探しても全く見つからなくって、急いであの子の家に行って説明したわ。警察にも連絡して捜索願いも出して、でも見つからなくって。半年すぎた頃かしら、夢の中にあの子が出てきたの。異世界に来たこと、素敵な人と出会ったこと、…いろいろね。そしたら、お婆ちゃんもお爺ちゃんもこの人も全員、夢で会ったっていうの。…信じるしかないじゃない?」


「そっか…」


そう頷くとお兄ちゃんはまた写真に目をやった。



「千香、その…『マオちゃん』って人は今呼べるか?」


「今日はね、もうダメなの。わたしまだ6歳だからね魔法の力がちょっとなんだって。」


「そうか…」


お父さんは残念そうに写真をみた。

わたしが小学6年生のお姉さんだったらできたのかもしれない。

はやくお姉さんになりたい。


「ごめんね」


しょんもりと居心地悪そうに謝る。


「いや、いいんだ!父さんが悪かった、そんなにしょんぼりするな。」


お父さんが近くに来てぎゅっと抱きしめてくれる。


「もしかしたら、佐藤家には魔法の力が代々あったのかもしれないな。叔母さんと千香はきっとその力が強くでたんだ。とってもすごいことだぞ!」


すごいと言われてとってもうれしくなった。


「あのね、あのね、明日の6時ならマオちゃん呼べるよ!」


「そうか、でもお父さんとお母さんがいるときに呼んでほしいんだ。みんなで晩ご飯を食べたら呼んでくれるか?」


「わかった!明日晩ごはん食べてからね!」





明日がとっても待ち遠しくなった。布団の中に入っても、目がギンッと開いてしまう。

布団を頭まですっぽりとかぶりぎゅっと目をつむる。

隣の部屋から、お兄ちゃんの声が聞こえる。なんだか魔法の言葉を唱えてるみたい。

お兄ちゃんのこそこそ声を聞きながら意識が遠退いていった。


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