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わたしは怒っていた。

プンプンである。

こっそり教えてあげたのに、お兄ちゃんはまったく信じてくれないのだ。

わたしが『しょうかん』ができる『ゆうしゃ』だということを!!




「わかった、わかったから」


「ぜんぜんわかってないもん!」


「千香が魔王を召還して洗濯物取り込んでくれた、それでいいから。今度取り込むときはちゃんと俺を呼ぶんだぞ。危ないから。」


「違うってば!!マオーが魔法でやってくれたの!!」



も~~!と大きい声をだしながら地団駄を踏む。

お兄ちゃんはすでにテレビ画面に夢中になっている。



昨日の夜、もう一度召還しようとしたが、まったく来てくれる気配はなかった。

違う召還の舞を踊っても、言葉を変えてみても、ただ靴跡の残った魔法陣がそこにあるだけ。

また呼んでもいいって言ったのに。



「マオちゃんのうそつき」



ぐすんとぼやけた視界をぬぐって、魔法陣の描かれたお絵かきノートを破って捨てる。

真っ白のお絵かきノートに昨日描いた魔法陣をもう一度丁寧に描いていく。


「…マル書いて、お星さま」


昨日より丁寧に描いたおかげで満足のいく魔法陣が描けた。


「よし」


ひとつうなずき、昨日会った『マオー』を思い浮かべる。


「わたしのねがいをかなえたまえ、いでよ、マオー!!」


バッと立ち上がって、くるりと回り、床においた魔法陣へ手をおいた。

すると、ピカッと光ったと思うと魔法陣の上には昨日と同じピカリと光った革靴があった。



「マオちゃん!!」


マオはちらりと周囲を見回し、チカを見た。


「チカ、昨日振りだな、…どうした目が真っ赤ではないか。」



チカは、母や父、兄に話してもマオのこと、召還のことをまったく信じてくれなかたったこと、それがとてもくやしかったこと、昨日の夜も召還したのに出てきてくれなかったこと、悲しかったことを一生懸命話した。


「…そうか、チカ、お前は何歳だ?」


「…6歳」


「6歳か、なら魔法の力がまだ少ないのかもしれない。だから一日一回の召還しか出来ないのかもしれない。」


「…そうなのかな?」


「ああ、きっとそうだ。だって昨日と同じ時間だろう?」


「…うん、そうだね!」


時計をみれば短い針が6を指している。たしか、昨日も6を指していた。


「じゃあ、マオちゃん。お兄ちゃんにわたしがマオちゃんを『しょうかん』したって一緒に言ってくれる?」


「ああ、分かった。じゃあその兄の所へ連れて行ってくれるか?」


「うん!こっち!」


お兄ちゃんの部屋にノックをして入る。


「お兄ちゃんみて!マオちゃん!」


じゃーん!!と手を広げてアピールする。

なんだと振り返ったお兄ちゃんはぎょっと目をぱちぱちさせた。


「え、え、ちょ、は?誰!!??角!?てか靴!!土足なんですけど!!」


「あ、ほんとだ、マオちゃんおうちの中では靴は脱がなきゃ!」


「ああ、そうかすまない。」


「いや、ちょっとまって!千香、知らない人を家に上げたらだめだろ!ちょっとこっちに来なさい!」


「違うもん!マオちゃんはわたしが『しょうかん』したんだもん!」


「いや、召還て。それゲームとかアニメの話だから!そんなの―――!!??」


パチンと音がして、突然口を触り出したお兄ちゃんに不思議に思い、マオちゃんをふり返る。


「取りあえずちょっと話を聞いてくれないか?」


指ぱっちん、きっと魔法を使ったのだ。

お兄ちゃんは顔を真っ青にさせていた。


マオちゃんはお兄ちゃんに『いせかい』が本当にあること、わたしが本当にマオちゃんを召還したこと、マオちゃんのお母さんが『せいじょ』ってやつに選ばれて、こっちから『いせかい』にいったこと、マオちゃんがこっちの『ち』が流れているから、こっちにこられたのかもしれないということを話した。



「――ということだ。」


「…なるほど。」



最後の方はよく分からなかったけど、マオちゃんとお兄ちゃんは納得してるし、わたしは大満足だ!

フムフムと分かったふりをしておく。

するとマオちゃんの足元が光り出した、もうお別れの時間だ。


「マオちゃんちょっとまってて!」


急いで部屋をでて、台所へ。たしかチョコがあったはず。

チョコを片手に部屋へ戻るとなんだか仲良さそうにおしゃべりしていた。


「マオちゃん、今日はありがと!また明日呼んで良い?」


「ああ、待っている。…ショウ、すまないが頼む。」


「わかったよ、マオさん。また明日。」


ひらりと手を振ってマオちゃんは消えていった。


「お兄ちゃん、マオちゃんになにか頼まれたの?」


「ああ、ちょっとな」




※※※※※※※※※※



「母上。」


「なあに、ごはんはちょっとまってね、もうすぐできるから」


夕飯の仕度をする母に声をかけ、


「今日も土産だ。」


バッと勢いよく振り向く母にちらりとそれを見せた。


「今日はチョコね!板チョコ!懐かしい~~!!」


「母上、明日また呼ばれると思う。祖父母へ手紙をだしてみないか?」


「――で、でも住所が変わってるかもしれない。それに本当にその世界が私のいたところかも分からないし…。」


「でも、試してみないとわからないであろう?やってみる価値はあると思う。」


「…そう、そうね。ちょっと考えて見る。」


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