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七尾の猫の干支オニギリ  作者: 鈴神楽
001 セブン×三=十二支?
6/20

001_己/友の頑な拘りは?

『001_己/友の頑な拘りは?

/2040/12/07

/PCW/フィリピン/復興中の道

/スケット 徳川秀吉中尉』


『トクヒデって仇名は、センスがあると思うぜ』

 そういってくるのは、携帯端末先、少女の件を頼んだギルドマスターだった。

「私は、ミドルと違って自分の名前を名乗る度胸もないだけだ」

 セブンにしろ、私にしろ、仇名で呼び合うのは、ある種の防護策だ。

 RMSのセクションに所属するチームでも、RMSに正式に認められたギルドでも、仲間が居るパーティーでもないスケットと呼ばれる傭兵紛いな私達にとって本名を晒すのが危険すぎるからだ。

 実際、本名を無関係な人間に知られ、家族や親せきを人質に取られて不利な状態に陥ったスケットも多い。

 ミドルがそれでも本名のファミリーネームを公言していたのは、天災で家族を失い、最後の一人であり、ミドルの家が滅びていないという主張だったのだろう。

 正直、私は、自分の名前が嫌いだ。

 徳川、あの『徳川家康』の赤の他人といっても構わない程に離れているが系譜である。

 医者であった高慢な父が天下人の『豊臣秀吉』の名前を付けたのは、私にもそんな人間になれという思いなのだろうが、学生時代は、からかいの対象でしかなかった。

 それでつけた仇名がトクヒデだ。

『ミドル……惜しい男を亡くしたな。フィリピン政府の奴がもっと現実を理解していればこんな事には、ならなかっただろうにな』

 ギルドマスターの言葉に俺は、頷く。

「そうだな。現実を理解しなかった無能政府のツケの一つがこれだがな」

『ガキをメンバー登録した所で採取ぐらいしか使えねえよ。塵獣を減らしたければもっと訓練をしてからじゃなきゃ意味がねえさ』

 ギルドマスターの言葉には、隠しきれない苛立ちがあった。

「採取をやらせれば税収が発生する。全ては、金の為だろう」

 俺の辛辣の言葉をギルドマスターが肯定する。

『だな。レイド参加補助金すらケチったんだからな!』

 本来、災獣が発生した場合、天災の発生地区の国家政府が補助金を出して民間からの参加を促進させるのだ。

 天災による被害を考えれば当然の事だが、今回、フィリピン政府は、起こる天災が豪雨な事から、時季外れの台風扱い、補助の必要性を軽視し、補助金を渋ったのだ。

 レイド、それは、参加者にとってまさに命懸け。

 それだけに参加する以上は、それ相応の見返りが求められる。

 それが通常なら得られる補助金が殆ど無いとすれば参加しない者も多い事だろう。

 実際に今回のレイドに参加したのは、RMSのM専属チームの他には、罰則による強制参加を除けばセブンやミドルの様な天災で家族を失った様な個人的な理由からの参加者だけだった。

 その結果、純粋な人数からくる火力不足による天災の長期化が想定される状況になっていた。

 それを防ぎたい豪雨によって家が流され家族で唯一救出されたミドルが普段ならまずしない、体中の気を残らず使った特攻を行ったのだ。

 私は、ぬかるんだけでまだ道の役割を失っていない道を踏みしめて告げる。

「いま、こうやって歩けるのは、ミドルの御蔭だな」

『フィリピンの連中の殆どが知ることもないだろうがな。何なら俺の所の東アジアの連中への教育に組み込んでおくか?』

 ギルドマスターの問い掛けに私は、苦笑する。

「不要ですよ。ミドルは、そんな事を求めは、しませんから」

『だな。それじゃあ、お前達が推薦する以外で見込みがありそうな奴をスカウトする準備がある』

 そういってギルドマスターは、通信を切った。

 少しぬかるんだ道を一人で歩いていると後ろからセブンが駆け寄ってくる。

「連絡をしてくれてありがとうよ」

「気にするな。それより今回もゴム有りか?」

 私がそうからかうとセブンが肩を落とす。

「お前には、説明しただろう。俺は、二度と自分が望まない種付けなんてしねえよ」

「『ブラッディーホワイトデー』だったな?」

 私の確認にセブンが遠い目をする。

「そうだ。俺の人生を激変させた一日だよ」

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