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■8 甘党のお兄さん


 次の日、教えて頂いた通りに北の外れにある路地裏に薬草店を見つけた。そんなに大きくないお店、でも古そうには見えない建物だ。


 扉を開けると、カランカランと音が鳴る。中には、薬草が並んでいて奥にカウンターがあった。わぁ、品揃えがいい。



「ミミック草がある!!」



 これは、特定の温度で乾燥させて使うことが多い。これは完璧に処理されている。しかもこの時期にあるなんて。


 他にも、入手困難な品物がいくつもある。なんて豊富な品揃えなんだ!



「こりゃまた若い嬢ちゃんが来たもんだ。って、待て待て、そいつぁグリフォンか!?」


「あ、はい、そうです」


「珍しいもん連れてんな、初めて見た」



 そう言う、眼鏡をかけ髭を生やした白髪の男性。70代くらいだろうか。



「マルギルさんでしょうか」


「ほぅ、誰に聞いてきたんだ?」


「ランディさんです」


「へぇ、あいつがねぇ。確かに、お前さんが持ってるソレは上級錬成によく使われるモンだ。魔力混合錬成は出来っか?」


「はい」


「あのぺらっぺらな紙を使わずに?」


「はい」



 そうして、渡されたのはエクリカ鉱石。恐らく、火魔法を使う薬瓶を作れと言っているのだろう。テストか何か? 疑われているわけだ。ちょっとカチンときたかも。



「ほぅ、珍しいもん使うじゃねぇか」



 珍しいもん、とはこの杖の事だろう。最近の人達はこれよりずっと短いの使ってるって言ってたし。




『展開』



Ignis(イグニス)



 そして、



Creare(クレアーレ)



 溶け合わせてすぐに錬成完了。店主の目の前に置いた。今の私の顔はドヤ顔だと思う。



「ほぅ、こりゃ驚いた。いい腕してんじゃねぇか」


「ありがとうございます」


「最近の錬金術師ときちゃ骨無しの腰抜けばかりだからなぁ、疑って悪かった」



 昔は嬢ちゃんみたいな優秀な錬金術師はわんさかいたもんだ。と、語り出しす店主。



「ニレミの新芽と実と木片ってあります?」


「何だい嬢ちゃん、ニレミの木片なんて……解毒の最上級ポーションまで作れんのか」


「え?」


「普通の錬金術師じゃ中々作れねぇぞ、何もんだい。師は?」


「あぁーっと、偶々会った旅人さんに色々と伝授してもらっただけですよ、あはは」


「ほぉ……ま、そういう事にしといてやんよ」



 助かった……のかな? 何かを察したみたいだけれど、まぁいっか。この人なら信頼できそう。何となくだけど。



「新芽と実はこっちだ。木片は切らしてっから明後日にまた来な」


「ありがとうございます! あと一つ聞いてもいいですか?」


「何だい」


「ポーションを売るのにいいお店ってあります?」


「それなら俺の知人が店やってんぞ。話つけといてやるよ」


「ありがとうございます! 助かります!」


「嬢ちゃんのお陰で、これから経済が回りそうだな」


「お役に立てればいいんですけどね」





 紙袋に購入したものを入れてくれて、収納魔法陣に入れ店を後にした。



「そういえばこの近くに美味しいパン屋さんがあるってルナンさんが言ってたな」



 そこも寄って行こう。凄く美味しいからって言っていたから楽しみだなぁ。



「お嬢ちゃん一人?」



「……?」



 裏路地を抜けたところで、目の前にずいっと入り込んで道を塞いできた3人組の男性達。



「ここらは不気味だからお嬢ちゃん一人でいない方がいい、俺らが連れてってやるよ」


「あの、大丈夫ですから」


「いやいやいや、こんな可愛いお嬢ちゃんはすぐに狙われっちゃうから。俺らといたほうが正解だと思うよ?」



 あんたらが言いますか? 分かりやすすぎるよ? 小娘だからって舐めすぎじゃありませんか?


 目の前の一番背の高い男性から伸びてきた手。それは明らかに私の左腕を掴みに来ていて。火魔法で火傷くらいはいいよねと構えていたらまたまた違う腕が出てきた。



「女性一人に何をしているのかな」


「え?」


「あぁ?」



 もう一つの手は男の腕を掴んでいる。そして私との間に入ってきた。



「何か用かぁ?」


「邪魔すんじゃ……っ痛!?」



 ミシミシと嫌な音がする。笑顔だけれど凄い力だ。何か言いたそうだけど言えなくて悔しそうな顔で行ってしまった。



「大丈夫かい?」


「あ、はい、ありがとうございます」


「こんな所で女性一人は危ないよ」



 つい先ほど同じセリフを聞きました。やっぱり誰かと来たほうがよかったかな。ルシルと来たけどあまり効果なかった。



「人気のある所まで送っていくよ。……あぁ、これじゃあさっきの男共と一緒か」



 どうしたものかと考えている男性。剣を腰に下げているから冒険者だろうか。いや、アルさんみたいに騎士かもしれない。



「じゃあ……ここら辺に人気のパン屋さんがあるらしいんですけど、知ってますか?」


「パン屋か、あぁ知ってるよ」


「どこにあるのか分からなくて、案内して頂けたら助かるのですが……」


「ははっ。お安い御用だ」


「ありがとうございます」



 この男性は、パンが好きらしい。特に甘いパン。何度も行ったことがあるらしくて、おすすめはラルクパンだと言っていた。甘いラルクの実がごろごろとたくさん入っているから気に入っているのだとか。



「もしかして、甘いもの好きですか?」


「え!?」


「あ、違いました……??」


「えぇーっと、はい。あはは」


「あはは、私もですよ。美味しいですよね」



 という事で意気投合。そして話を聞いているとすぐにお目当てのパン屋さんに到着。扉を開けた瞬間に美味しそうなパンの香りが鼻を通っていった。


 結構種類はあるけど、まだここに来たのは最近だからどれも食べたことのないものばかり。ワクワクする。


 隣の男性は、目がキラキラしている。たぶん私が盗み見ている事すら気が付いていないご様子。


 これが、ルナンさんが言ってた可愛い系美男子というものなのか。いや、ギャップというものなのかな?


 とりあえず、おすすめのパンと目に留まったパンを購入。男性も買っていた。



「これ、どうぞ」


「え?」



 別で袋詰めにしてもらったパンを目の前にだした。



「助けて頂いたのと案内してもらったお礼です、受け取ってください」


「ははっ。ありがとう、じゃあ有難く頂くよ」



 最後に、彼はギルと名乗って別れた。


 早く帰って、パンを食べよう。いい匂いがしているけれど、宿まで我慢だ。




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