■5 初めての依頼
元帥さんとの契約が成立した次の日、私とルシルはギルドに赴いていた。
このサーペンテイン王国で獣と契約している人が珍しいらしく、当然私とルシルに視線が集まる訳で。早く依頼を選んで行こうと思い直で依頼ボードに。
貼ってあるのは採取だったり、討伐だったり、護衛だったり。
私は今FランクだからFかEだよね。そうだな……
「コボルト、ゴブリンあたりがいいかな……えっ、美味しくない?」
隣にいたルシルが視線で訴えてきた。えぇえ、でもこれ以上は受けられないよ?
あ、でも依頼を受けなくてもいいのか。
「ちゃんとゴブリンとコボルトを倒せたら違うの食べていいよ。それでいい?」
おぉ、満足顔だ。
そうして、依頼書を受付に持っていき受注した。
「え、もう倒したの?」
薬草採取中にもうお亡くなりモンスターを複数咥え、背中にも乗せて持ってきたルシル。体の大きさを変えることのできるルシルは、いつもより大きな身体で運んできたのだ。凄い血塗れですよ?
『展開』
『Aqua』
目の前に降ろされたコボルト5体を水魔法で血抜き。耳をナイフで切り落として、モンスター用の収納魔法陣へ投げ入れた。
そうしてルシルも血を落としてあげようと思った時にはもう彼女はいなかった。次の依頼、ゴブリン10匹を狩りに行ってしまったらしい。
「さすがグリフォン……」
このままじゃ私が採取終わる前にルシルが終わっちゃう。
今回、私は採取の依頼の他に自分が使う材料を取りに来た。あの昨日契約したポーションの材料だ。
あの時、材料の提供は断った。あの錬金術のお店の状態を見たからだ。ああいった材料を渡されてしまうと、かえって大変になってしまうし、騎士さん達も大変だろう。
それに、王宮の騎士団の他に扱っているお店にも納品しようとも思っている。
アルさんに、サーペンテイン王国自体ポーションなどが出回っていないと教えてくれた。だとしたら、ギルドに所属しているハンター達にも十分に回っていない事になる。
なら、作って売ってしまえばいい。まぁ、材料を採取するのには限りがあるから大変ではあるけれど。後で、扱っている店を見つけて納品させてもらえないか見つけなければ。
「あった!」
やぁーっと見つけたわよ! クレカ鉱石!!
「会いたかったよ~。よし、『展開』!」
『Ignis』
クレカ鉱石と、収納袋の中に入れておいたメリカ銅。そして火魔法。
『Creare』
三つが聖水と溶け合って、形を成す。出来上がったのは、ナイフだ。
「ちょっと欠けちゃってたからね。新調できて良かった!」
材料に使ったのは、どちらも非常に頑丈で硬い鉱石。しかも手作業で加工するにはだいぶ扱いずらい。もし鍛冶屋にこれを持っていったら嫌がられる代物だ。
だから、毎回自分で錬成して作っている。今回は結構切れ味がいいかもしれない。
試し切りで採取していた木の幹を狙ってナイフを振る。思った通り、軽く振っただけでドサッと音を立てて倒れてしまった。やっぱり、大きさの割には大きなものでも簡単に切れる。
「うん、いい感じ」
葉っぱと木の枝を選別して、いい物だけをどんどん収納袋へ入れ魔法陣に。うん、これだけあれば沢山ポーションを作れるね。
じゃああとはエクリカ鉱石を大量に集めなければ。これから薬瓶が大量に必要になってくるから重要だ。
あ、出来上がったものを収納するための木箱も沢山用意しなきゃいけないなぁ。
一体私は材料をどれだけ集めなければいけないのだろうか。
「これ全部集めたら明日は宿の部屋で籠って錬成しまくりだね」
あの後、5日後に取りに来ますと言っていた。
その前にこれ全部終わらせなきゃいけないなぁ。とは思っても、今までの鍛錬で何徹もした時に比べればなんてことない。
「あら、お帰りルシル……毎回思うけれど、よく10匹背中に乗せてこられるね」
力持ち? いや、あぁあとバランス感覚の問題?
「……」
「はいはい、血抜きね」
視線で催促しないでよ、全く。
血抜きで一部分を一匹ずつ採取し始めた時にはまたもやもうルシルの姿は消えていて。お腹が空いて狩りに出かけたようで。
まぁいいや、ルシルのお陰で依頼を達成できそうだし。依頼の報酬はルシルのお陰で貰えるんだし。
「これで、何日かはルシルのご飯に困らないね」
そんな事を言いながら収納魔法を開いてモンスターを収納していった。