■30 モノリア伯爵
次の日、指定依頼の依頼者であるモノリア伯爵の所へ。
大きなお屋敷に辿り着き、用件を伝えると執事のような人が出てきた。こちらへ、と案内をされて客室のような部屋に通された。
「よく来たね。私が依頼したラウランド・モノリア伯爵だ」
「は、初めまして。錬金術師のステファニーです」
依頼されていたものです。と目の前の机に昨日取ってきたマグリア鉱石を置く。執事であろう人物が確認し、確かにと一言貰うと、準備してくださっていた報酬である白金貨10枚を横に並べられた。
だが、それの横に大きめな長方形の箱と小さめの箱がふたつ。合計3つの箱が置かれた。
「君の活躍は聞いているよ。とても腕の良い錬金術師だと。人身売買の事件、モルティアート領での流行り病を解決したそうじゃないか。私はそんな錬金術師を聞いた事がない。誇っていい事だよ」
「あ、りがとう、ございます」
「はは、そんな緊張しなくていいさ。それで、君に提案があるんだ」
「提案、ですか……」
モノリア伯爵は執事に視線を送ると、一つずつ箱のふたを開けていった。
「ユニコーンの角に、オリハルコン、あと、ムーンストーンですか?」
「あぁ、そうだ。流石錬金術師だな。これは、君の為に用意したんだ」
「私の為に、ですか?」
「そう、実は、君を養女に迎え入れたいと思っていてね」
養女、という事はモノリア伯爵令嬢になってくれという事か。
「君は錬金術師だ。これらの価値を、分かっていると思うのだが」
このユニコーンの角は、雄のもの。雌の角も貴重だけれど、雄となると価値が跳ね上がる。
オリハルコンは、大量のマナを蓄積することが出来る。大きさによって蓄積できるマナの量が変わってくるが、これはとても大きい為に他よりも大量のマナを蓄積することが出来るだろう。
そしてこのムーンストーン。これは、希少価値の高い鉱物。あの、不老の薬である練丹を錬成するために必要となる素材で一番重要なものとなる。
どれも、錬金術師だったら喉から手が出るほど欲しいものだろう。
____本物であれば。
「素晴らしいですね」
「そうだろう、手にいれるのに苦労したんだ」
「いえ、素晴らしい偽装技術ですね」
「ッッ!?」
「今回の報酬であるその白金貨は青銅。そしてこっちは鉄くずと、ミロ鉱石ですかね」
「ッ……な、何の事だい?」
ミロ鉱石は、鉱山ではよく出てくる鉱石だ。どこでも簡単に安価で手に入れることが出来るとモダルさんに聞いた事がある。ほんと、舐められたものね。小娘だからって騙せると思われたのかな?
「なかなか手に入らないものですからね、最近偽装詐欺が増えてるらしいので鑑定してもらったほうがいいと思いますよ」
「い、いや。もうすでに鑑定は済んでいるんだ」
「ついこの前、ギルドでの報酬で受け取った白金貨が偽装硬貨だったんですよ。ギルドの職員の中にいらっしゃる鑑定士は気が付かなかったのです。とある人物が気が付いてギルドが王宮随一の鑑定士をお呼びしたんです」
どんどん、相手の顔が強張ってきている。分かりやすいことこの上ない。
「さて、これはすぐに王宮隋一の鑑定士であるレドモンド・モワズリー様に鑑定していただいたほうがよさそうですね」
「ッ……」
「ね? ラウランド・モノリア伯爵?」
すると、いきなり部屋の扉が勢いよく開かれた。入ってきたのはこの家の警備兵らしい人達がたくさん。そして、剣を私に向けてきた。
「何の真似でしょう?」
「高価な品を偽物扱いされてはこちらも困るんでね」
「……」
肩に乗っていたルシルは唸っていたけれど大丈夫と鎮めさせ、アルさん達を連れてきてと目配せをし勢いよく飛び出し窓から脱出していった。
「こっこらッ!!」
『展開』
『Terra』
『Creare』
ポケットに入れていた〝ルマンドワールの種〟と、土魔法を錬成。
『Ventus』
錬成された、睡眠薬。それを、風魔法で撒き散らす。
と、
「おやすみなさぁーい」
ぱったんぱったん倒れていく人達。そして寝息も聞こえてきた。
良い夢を~??
よし、あとはアルさん達を待とう。
〝レルドルの種〟を取り出して蔓を錬成し締め上げた。
「さて、来るまでこの屋敷を探索しようかな」
「……物音がしない」
取っ手が大きな3つの南京錠で施錠がされている部屋を発見した。これは、中に何かあるって証拠。
「そうね……クレカ鉱石かな」
『展開』
『Terra』
『Creare』
土魔法と南京錠の素材とクレカ鉱石を錬成させネアジム磁石を作り出した。そして収納魔法陣の中に放り込んだ。
よし、南京錠が無くなればもう簡単、ゆっくりと扉を開けた。
中には、大量の木箱が積みあがっていて。中身は、装飾品、織物、ポーション。そして__白金貨。
部屋の隅っこに目をやると、地べたで座る少年。痩せ細り、服と呼べない布を羽織っている。
私に気が付いた少年は、驚き作業を止めた。そう、作業とは錬金術。手元には、あの青銅と、白金貨がある。
さぁ、もうわかるだろう。あの偽物を作り出していたのは、この少年だ。
「君、名前は?」
「ッ……」
「私はステファニー。錬金術師だよ」
「!?」
錬金術師。その言葉に反応したのか顔を下げていた顔が、勢いよく上がり視線が合った。
「名前、教えてくれない?」
「……ジョシュア」
「ジョシュア? うん、じゃあよろしくね、ジョシュア」
「!?」
「ねぇ、これ全部ジョシュアが作ったの?」
「ッ……」
そう聞くと、険しい顔をした。
彼は分かっていた。
これはいけない事だと。
「そう、君だったんだね」
沢山山積みになっている装飾品や硬貨。自主的ではないことは一目瞭然。こんな部屋で、見たところちゃんとご飯を与えられていない。しかも施錠された部屋に閉じ込められて。
「ジョシュア、貴方はとてもいい腕をしている」
「!?」
こんな所で、強制的に偽物を作らされるなんて、許せない。ちょっと一発殴ってこようか。どうせあの部屋で眠りこけている事だし。
「……ねぇ、ジョシュア。その手の甲……」
刻まれている陣。
直接。
「これ、あの伯爵が……?」
「??」
コクッと頷く。
直接だなんて、痛かったでしょうに。
『収納魔法陣』
あの時貰ったワームの皮膚を取り出した。
『展開』
『Aqua』
『Creare』
暖かい毛布を作りあげ、茫然と見ていたジョシュアの方に掛ける。
「……もうこんな所から出よう」
小さな体を抱き上げた。見た目よりもとても軽い。
早く、美味しいご飯を食べさせてあげよう。




