■28 水晶
さて、この水晶だけど……
見たところ、これは毒霧が放出されているのだろう。予測だが。この甘ったるい匂いは人間には害がない所を見ると、モンスターに効果のある毒という事になる。
「割って破壊しても、この毒の霧が一気に拡散してしまうだろうし……」
「あの日のように、毒のみを錬成素材とすることは……」
「いえ、この毒の詳細が分からないのでそれは不可能です」
鑑定しても不可能。それだけレベルの高い代物だという事だ。力不足なのが悔しいな。やっぱり、押さえつけて蓋をしてしまう?
悶々と頭を巡らせていた時にいきなり地響きが、周りにいた騎士さん達が一瞬で戦闘態勢に入り私を囲ってくれた。流石騎士団の皆さん達だ。
「ロック鳥、だけど変異してる……?」
私は2.3回出会ったことはあるけど、こんなにどす黒い色はしていなかったし、こんなに爪が鋭くなっていなかった。
あまり強いモンスターではないはずなんだけれど、これの原因は共食いなのだろうか。だとしたら、一刻も早くこれを処理してモンスターを何とかしなければいけない。
そんな時、遠くから煙が上がった。水晶石が全て埋め込まれたという合図だ。
よしっ。そう気合いを入れて杖を地面に付き刺した。
『展開』
『Aqua』
〝ラワドラスの種〟
『水結界』
そう唱え、水晶石と杖をマナで連結。その後に魔力の籠った水が水晶石から噴き出し、それは四方と繋がり薄い膜を作り出し、上へ上へと延びだした。そして、正方形となり一帯を包む。結界だ。
「……よし」
ふと、騎士団の皆さんの方へ視線をやるとロック鳥は討ち取られていた。けれどまた次のモンスターを対峙していて。これは早くしなければ、そう水晶に目を戻した。
「やっぱり、封じ込めてしまうのが一番」
けど、甘く見ちゃいけない。こんなにマナを凝縮された物なんて見たことない。
『展開』
〝カドラスの種〟
『Aqua』
『Creare』
地面から植物が生えていき、大きく開いた黄色の花が水晶を包んだ。
どんどん花びらが生えてきては何重にも包んでいく。
そして、
〝レルドルの種〟
長く生えてきた蔓。それは包まれた水晶に巻き付いた。
逃がさない。
全て閉じ込める。
『 我 大地の女神ガイアの代理人なり
この世の万物を支える大地を脅かすモノに
我の力を以って
逃がすことなく 全てを包み
ここに封ずる
全ては、我らが偉大なる大地の女神ガイアの名の元に___』
展開した陣が、光り出し水晶を包み込んだ。
「_________________________________ふぅ」
良かった、成功。
穴は感じられない。
「もう。誰だ、こんなの作り出したやつは」
「ステファニーさん……?」
「あ、終わりましたか?」
「一旦片付きましたけれど……それは?」
指をさしたのは、私が持っているこれの事だろう。
「一応封じ込めました。けれど、あくまでも閉じ込めただけですから、これから調べて消滅させます」
「な、るほど」
「さすがです、錬金術師様……!」
念には念を込めて、『Glacies』。よし、氷漬けしたから何とか安心。
さて、あとはここら一帯に放出されてしまった毒霧が残ってる。
『Ventus』
水晶石ともう一度杖を連結させた。
「強風に備えてください」
「「「えっ!?」」」
細長く伸びる竜巻を出現させた。それによって、中心に毒霧が集まってくる。
毒霧を中心に押し込み、毒霧の粒子を一点に集める。押し込めて、押し込めて、そして凝縮させて。
〝メミリアの種〟
『Terra』
『Lux』
錬成で作り出したのは、小さな箱。その中に、凝縮した毒霧の粒子を入れて、蓋をした。
〝カドラスの種〟
『Aqua』
『Creare』
先程と同じように、箱を封じ込めた。
「な、なんと……」
「れ、錬金術師様……」
皆さん、吃驚顔。
いや、これで終わりではないですよ。
空気中に漂っていた毒霧は処理出来ても、もう大量に吸ってしまっていたモンスターは倒さなければいけない。
「……ッッッ!?」
どくんっ
心臓が脈打ったかと思うと、口が鉄の味がしてきて。
ごほッごほッ……
「えっ錬金術師様ッ!?」
「ステファニーさんッ!!」
そこからどうなったのかは、私は覚えていない。




