■20 大量な指定依頼
あれから、私に指名依頼がたくさん来るようになってしまった。
偶々会ったミリィ、ユリア、エルサと内容の仕訳を手伝ってくれたけれど……
「凄い量だね、大丈夫……?」
「HPやMP、解毒の最上級ポーションが大量だね。採取とか手伝おうか?」
後は、錬金術で直してほしい物とかも。あと、病気を治してほしいと。私はポーションは提供できるけれど、医者ではない。モルティアートでの件は偶々知識があったからだ。だからこれは頼む人を間違えている。
「貴族様からの依頼が多いから報酬は多いものばっかだけど、流石にこれ全部となると……」
あはは、流石に皆苦笑い。これ全部で何十枚あるんだろうか。
これ、今すぐっていうもの以外にもたくさん。まさかコレクションにするつもり? すぐに使わないと効力が徐々に失っていってしまうからすぐに使ってほしいんだけれどなぁ……
「断る事ってできるの?」
「可能だよ、アホみたいなやつ全部断っちゃいなって。これ全部なんて鬼畜過ぎだよ」
色々な依頼人の噂とかをよく知っている三人に色々聞いて、断るものと、すぐに受けるものと、後に回すものを仕分け。3分の1くらいになったかな。それ以外は流石に出来ないものやコレクションとして欲しいだけという事になる。
じゃあこれをお願いしますと受注してすぐに向かった。
これから忙しくなりそうだ。自分の身体が2つあればいいのにとあと何時間後に思う事になるのをまだ私は知らない。
「どうした、そんなにやつれて」
「こんにちは、マルギルさん……」
マルギルさんのお店を大いにフル活用しようと大量購入。そうでもしないと間に合わないくらいあの後また指定依頼がわんさか入ってきた。
ミリィ達が手伝ってくれて何とか回していけてる。別に大丈夫だよと言っても、ステファニーの身体は一つしかないんだからと手伝ってくれている。何と優しい人達なのだろうか、結構嬉しい。
「ちょっと、最近ギルドの方が忙しくてですね」
「あぁ、なるほどな。いやいや、有名になったもんだなぁ、〝デイム・ステファニー殿〟ってか?」
「ちょっと、マルギルさんまで言うんですか?」
「本当の事じゃねぇか」
「もうっ!!」
「巷で噂になってんじゃねぇか。モルティアート領を救った〝凄腕錬金術師〟って。王宮から十字勲章貰っちまったって聞いたぞ。噂が流れるのは早いんだ、仕方ねぇだろ?」
どこに行っても言われるこの噂。ルシルのご飯の為に行くギルドでも噂になってて最近は外套を着なくちゃいけなくなってしまっているほどだ。
あれから、王様にお願いして〝賢者〟だという事は秘密にしてくださることになった。知っているのはあの日謁見室にいらっしゃった方々とダルベルトさん、アルさん、王宮術師さん達のみとなった。
だがしかし、あの日王室専用の魔鉱車で王宮からお迎えが来てしまった事や、隣町の事もあった為にこうなってしまったのだ。
「出まわっちまったのは仕方ねぇじゃねぇか。ほれ、注文してたもんだ」
「ですよねぇ……ありがとうございます」
「それより、こんなに注文して金は大丈夫なんか? この前だって高いの大量購入したんだ」
「あら、心配してくださるんですか?」
「ちげぇよ、大事な金づ…客がいなくなっちまったら困るってだけだ」
ちょっと、金づるって言おうとしたでしょ。まぁ、大量買いしてはいるけれどさ。この前だってニレミ木片大量買いしたし。
「沢山稼いでるんで大丈夫ですよ~」
「流石凄腕術師様だ」
「マルギルさん?」
「わりぃわりぃ」
「もうっ」
王宮とモダルさんのお店に納品するポーションでだいぶ稼いでるし、最近は高い報酬のギルドの指定依頼と、他諸々でだいぶ貯金があるからそこら辺は心配しなくてもいい。
それに、ずっと宿にいるのは申し訳ないからと家を買うためのお金を貯めてはいたけれど、王様が用意してくれるから使い道が無くなっちゃったのよね。
まぁ、それは家が出来た時の家具にあてよう。
「で? これからどこ行くんだ?」
「……王宮に」
「魔鉱車のお迎えか?」
「……はい」
今日は、以前術師の皆さん達と約束していた日。迎えに行かせるから待っていてくれと言われてしまった。
「何で分かったんです?」
「外套の下に着た服を見れば一発だろ。モルティアート侯爵様からか?」
「あー、はい」
あの事件で、感謝の印として大量の品を渡された。この上品な服もそうだ。
最初はドレスをと言われたのだけれど、使い道がないのでと断った。けどどういうのがいいかと聞かれてしまいこうなった。
まぁ、王宮に採取目的で着る服では行けないから感謝はしている。が、装飾品などは本当に使い道がなくて困ってる。一体どうしたらいいのかとそのまま収納魔法陣の中に保管されている。
あと、
『何かあった際には、君の後ろ盾となろう。これはその印として受け取ってくれ』
と、侯爵家の家紋が入ったブローチが渡された。こんな庶民の私なんかにと思ったけれど、侯爵様は引き下がらなかったので渋々受け取ったのだ。
「スカートなんて見慣れねぇの着てっからだよ」
「そんなに似合いませんか」
「そこまで言ってねぇよ、いいんじゃねぇか?」
「心にもないこと言わないでください」
「はっはっはっはっ」
酷い、マルギルさん……
「それにしても、大丈夫かぁ? 忙しそうじゃねぇか」
「あぁ、王宮で時間が空いた時にでも納品の品を作ろうかと。心配してくれるんですか」
「まぁ、な」
わぁお、心配してくれるなんて。珍しい事もあるんだなぁ。
まぁでも、体力だけはあるからね。大丈夫。
そして来てくださったお迎えのダルベルトさん。目立たない所でお願いしますと言うと了承してくださり、この裏路地に来てくださった。
「お迎えに上がりました、デイム・ステファニー様」
「……やっぱりこれですか」
「当たり前でございます」
ダルベルトさんにエスコートされて魔鉱車に乗り込んだ。
「……魔鉱車の中でくらい、名前で呼んでくださいませんか? 甘党お兄さん」
「えっ」
「ステファニーって」
「え、えぇと……」
「駄目、でしょうか……」
アルさんだって呼んでくれてるんだもん。それくらいね。
「ステファニー、さん……」
「はい、ダルベルトさん!」
最初のアルさんみたいだ、このぎこちなさは。でも、こっちのが嬉しい。




