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大賢者の弟子ステファニー  作者: 楠ノ木雫


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102/110

■101 捕まった……


 成人祝いのパーティーで、私に薔薇を差し出してきた殿下。



「で、殿下……?」


「受け取ってはくれないか?」


「これ、ですか……?」



 え、どうしてこのバラを? しかもこれ、白いバラだ。あまり見ない色だ。こんなの貰ってもいいのかな。と思っていたら、半ば強引に手に乗せられてしまった。え、これどうしたらいいの? と思っていたら……



「その代わり、君のその胸もとの薔薇をくれないか?」


「え?」


「君にあげてしまったから、ここが寂しくなってしまったからな。駄目か?」



 そういえば、私にもバラを付けられてたな。しかも、私と同じ髪色の、黄緑色の。よく見ない色だからこんなのあるんだ、と思ってたんだけど。


 手元に貰ったバラがあるから、どうしようと思っていたんだけど……殿下が髪に付けてくれた。あ、ありがとうございます。



「お待ちくださいっ!!」


「殿下っ!!」



 ガヤガヤする周りの方々。彼女は男爵ですぞ!! 只の錬金術師ですぞ!! といった声が飛んできて。どうしてこうなっているのか分からず大混乱の最中な私の頭の中。周りも収拾がつかなくなっていて、近づいてくる令嬢達。



「殿下っ!! その者は……」



「――少し」



 そんな、いつもより1トーン下がった殿下の声がこの空間に響く。



「騒がしいな」



 シーン、と静かになる。笑顔ではあるけれど、これは逆らってはいけないような威圧を放っている。中には顔を真っ青にしている者達もいて。その中の一人が私だ。



「それで」



 あっ……これ付けろって言われたんだ。いや、いいのか? 周りの反応も気になるし、だいぶ怪しい。



「ステファニー殿」



 あっ、この笑顔……これ付けなきゃいけない奴だよね。え、それ以外選択肢潰された……??


 プルプルと手を震わせゆっくりと取って付け……あれ、こ、こうかな? ちょっと苦戦はしたけれど、何とか付けられたかな。その数秒い後、……私は後悔した。



「さ、これで成立だ」


「……え?」



 いきなり両手を取られる。え、何が成立?? 嫌な予感がするのは私だけ?



「どうした、私の婚約者殿(・・・・・・)?」


「……は?」



 待て待て待て、今殿下なんて言った……?



「で、殿下って……婚約者……いらっしゃい……ましたっけ……?」


「何を言ってるんだ。ステファニー殿、君だろ」


「……え……?」


「今薔薇を交換したではないか」



 何だ、知らなかったのか。とニヤニヤしながらこちらを見ていて。待ってそんなの知らな……



「ひ、日頃の感謝って……」


「感謝()と言っただろう」



 も……言った、な。そうだ、言った。……ちょっと待って何でアスタロト公爵そんな所にいるのさ!! しかも今何で顔をそらしたのさ!! 今絶対笑ってるよね!! これ絶対知ってて黙ってたでしょっ!!



「知らなかったとしても、交換してしまったのだから取り消しはナシだ」


「……図りましたね……!!」



 さぁ、何の事やら。と満面の笑みを見せてくる殿下。でも、私は男爵だ。この国では王族は伯爵から上の家の令嬢としか結婚は出来ないのが決まりだ。



「あぁ、伯母上が君を養女として受け入れてくれるそうだぞ」


「へ?」



 殿下の視線の先を見ると、微笑みながらこちらに手を振る夫人。あぁお元気そうで何より……じゃない!! いや、私は男爵家当主だと思ったけれど……貴族の令嬢が領地を持つことは普通の事だ。稀なパターンだけど殿下なら絶対何とかしてくるに違いない。じゃあどうする? ここを切り抜ける方法は?



「陛下からお言葉を頂いてな」


「へ、陛下から……?」


「絶対に、確実に、何が何でもステファニー殿を捕まえろ。とな」



 獲物を見つけ仕留めた、そんな勝ち誇った顔をしている殿下。ちらり、と陛下の方を見ると満足顔でグッドサインを。へ、陛下ぁ……!!



「……私は獲物ですか」



 初めて陛下と殿下に出会った時は賢者の私にこの国に定住することを望んでいた。別にここまでしなくてもいいのでは……? この前だって殿下は私がこれまで出会って来た大切な人達を簡単に切り捨てられないって確信していたはずなのに。



「いいや? そんな事はないさ。今までの君との時間はとても心地良かった、丁度良かったよ」


「……私には務まりません」


「いや、君なら大丈夫。一年も経たずに貴族としての心得を身に付け、問題のあったあの領地をあそこまで解決してくれた。そして君のその理解力の速さがあれば大丈夫さ」


「……過大評価しすぎです」


「そんな事はない、自分を誇れ」



 そこまで言われて、何も言えなくなり口をもごもごしているとニヤニヤとこちらを見る殿下。……不服ではある。



「……はぁ、負けました」


「よし」



 二人に勝てる訳ないじゃないですか。今まで何回はめられただろうか。


 というより、さっきのは私に拒否権はなかったですよね。最初っから決まっていたという事ですか。……はぁ、仕方ないな。


面白いと思ってくださった方、もしよろしければブクマ、評価、ご感想などなどよろしくお願いします。特にご感想やレビューなどがあればとても嬉しいです。励みになります!

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