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幸せ

   ◆



「ははー、なるほど。つまり私が入れたコーヒーのせいで眠くなり、眠る前に私が意味深な発言をしたせいで睡眠薬を盛られたと勘違いした、と」

「その通りでございます」



 正座なう。板間のせいで膝めっちゃ痛え。

 柳谷からは立っていいとは言われたが、これは俺の誠意の問題だ。だからしばらくはこのままで。



「いえ、気にしてませんよ。ここ数日、私も自分がおかしいなーとは思っていましたから……」



 おかしい自覚はあったのか。



「……もしかしなくても、柳谷がおかしくなったのって……俺の交友関係のせいか?」

「っ……はは。やっぱりバレバレでしたか……」



 柳谷は俺の前にぺたんと座ると、指をもじもじさせた。



「ほ、本当は丹波君の交友関係ですから、私がとやかく言うのは違うとは思ってるんです。でも……」

「……他の女性と楽しそうに喋ってるのを見て、嫉妬したと」

「あぅ……」



 何この子超かわいい(ほっこり)。

 ……って、ほっこりしてる場合じゃねぇ。

 冷静に考えてみると、柳谷は俺に対してストーカーをしていた。そしてここ最近、柳谷は俺を束縛しようとしている。




 つまりこれは……ヤンデレの兆候──!




 まずいぞ。ヤンデレは2次元だから可愛いのであって、リアルヤンデレの未来は『死』しかない。

 このまま行けば、さっきの夢が現実になっちまう。どうにかせねば……!



「えっと……柳谷は、俺に女の子と接して欲しくないってこと……か?」

「……できれば……で、でもわかってますっ。そんなことしたら、生きていけないことくらい……だから、我慢しますっ」



 うーん。愛が重い。それだけ思ってくれてるのは嬉しいけど。


 それでも、やっぱり普通に生きていったり、普通に生活するには人間関係というのは重要なわけで。

 高校、大学、社会と、これから50年は続く人生で1回も女性と関わらないのは無理。


 柳谷に不安にさせず、かつ人間関係をいつも通り構築していく。


 そのためには……。



「柳谷。……いや、美南」

「……ぇ、ぁ……ぅ……?」



 突然の名前呼びに、美南は目を白黒させて困惑しているみたいだ。



「驚くことはないだろ。俺達は木曜日……4月16日には結婚する。もう苗字呼びは止めてもいい時期だと思ってな」

「ぁ……そうですね……」

「それじゃ……美南、こっちおいで」

「ぁぅ……はい、丹波く……いえ、裕二君……」



 おっかなびっくり。ゆっくりと近付いてきた美南を、少し力を入れて抱き締める。



「んっ……」

「痛いか?」

「……んーん……暖かいです……」



 最初は強ばってた美南の体も、徐々に力が抜け……俺に体を預けてきた。

 静かなリビングで、俺と美南の体が1つに溶け込むように抱きしめ合う。



「美南が不安な気持ち、わかるよ。俺も、美南が他の男と仲良く話してたら……心中穏やかじゃいられない」

「……裕二君も、そう思ってくれてるんですね」

「当たり前だろ。俺、美南が思ってる以上に美南のこと好きだぞ」

「むっ、それを言うなら私の方がもっと好きですもん」

「いいや俺だ」

「いえ私です」



 …………。



「「……ぷっ……ふふっ」」



 どちらともなく吹き出した。

 俺ら、お互いにお互いのこと好きすぎだな。



「……美南」

「……はい」

「……今、幸せか?」

「……裕二君と同じくらい、です」

「そっか……死ぬほど幸せか」

「ふふ。そうですね。でも死んじゃうのは無しです」

「わかってるよ。……この先も、ずっと一緒にいたい」

「それも、同じですね」



 美南の体温。

 美南の呼吸音。

 美南の鼓動。

 美南の声。


 美南の全てがたまらなく愛おしく、たまらなく好き。

 美南もそう思ってくれているだろう。

 依存……と言えば依存なのかもしれない。

 互いが互いに依存した、共依存。


 上等だ。共依存(それ)で俺達が幸せなら、共依存(それ)でいい。



「はふ……今私は、これまでの人生で1番幸せな時間をすごしています」

「大袈裟な」

「いえ、大袈裟ではありません。間違いなく、です」

「そっか……なら、今からそれを上書きしよう」



 抱き締めている美南から少し体を離し──。



「美南、世界で1番大好きだよ」

「……はい。私も裕二君を、世界で1番愛しています」



 ──キスをした。


 この間された不意打ちのキスではなく。

 互いが互いに求め合い、『愛』を確認するためのキス。


 離し、口付け、また離し、またキスをする。

 この行為に、美南は目をとろけさせて俺の首に手を回し……さらに深く、濃密なキスを繰り返す。

 俺もそれに応え、美南の髪をゆっくりと撫でていった。



「ふ……んっ……はぁ。……美南、これでもまだ、俺が他の女性に目移りする心配はあるか?」

「……いいえ、ありません。あなたが、私のことをこんなにも愛してくれてると知れたから」



 美南は俺の胸に顔を埋め、深呼吸をするかのように匂いを嗅いで幸せそうな笑みを浮かべる。


 リビングの時計を確認すると、現在時刻17時半。

 もう美南の習い事にも間に合わず、俺もジムに行く気になれない。


 ま、たまにはこうやってサボる日も必要……だよな。

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