四天王達
朝を迎え、ふかふかなベッドから起き上がる。軽く伸びをしてから視線を左に向けるとサテラがテーブルに向かってまだ何かやっていた。もしかして寝てないのかな?
「サテラ様、何してるんです?」
「ん?おはよう、マコ」
「あ、おはようございます」
もそもそとベッドから降りて、サテラに近づいて手元を見る。そこには昨晩渡したコスモ。
「何やってもさっぱりなのよ」
「そうなんですか〜」
適当に生返事を返すとサテラがコスモを渡してくるので受け取る。そういやコスモをコスモで鑑定出来るのかな?そう考えてコスモを開いてみると、
”一応出来ますよ。一応”
とコスモが答えたので鑑定をしてみる。
”コスモ レアリティ- 『マコ』の封印の鍵。現在3つの封印が解かれた状態。封印は残り6つ”
…見た所であんまり意味無かった。
さて、顔を洗って、着替えて…っと。
昨日サテラが施してくれた魔術紋様によって、黒曜豹のローブと白蜘蛛の服が中々に素晴らしい防具になっている。
”黒曜豹のローブ+ レアリティ2+ ソダクールの北方地域に生息する黒曜豹の皮で作られていて、更に魔術紋様を縫い込んだ一品。周囲の魔力を変換することで高い環境適応性能を有しており、ローブの内側を装備者にとっての快適な温度、湿度に保つ。又、対物理に非常に高い防御力を有する”
”白蜘蛛の服+ レアリティ3+ 白蜘蛛の糸を集めて編み込んだものに、更に魔術紋様を縫い込んだ一品。上下セット。周囲の魔力を変換して、装備者の魔力を十秒に1づつ回復する。衣服としてはトップクラスの物理、魔力的強度を誇り、火にも強い。但し魔術紋様が縫い込まれている為本来の肌触りは期待できない”
魔術紋様でここまで変わるんだな。最近肌寒い季節になってきたから快適な温度に保ってくれるっていうこのローブはきっと重宝する。そして白蜘蛛の服の魔力回復機能、私の場合精霊玉の首飾りに供給されるとの事で、10秒で1回復なら1分間に6、1時間で360回復するという恐ろしい程の効果が付与されている。首飾りの最大貯蓄量が150。なので25分で全回復するから、長期戦でもない限り魔術も魔法もチョーカーの障壁も少しすれば万全になるという事、凄い。
肌触りがどうとか書いてるけど、そこまで気になると言うほどでも無い。戦闘になった時にそんな事気にする人はいないでしょ。
「さぁマコ、早く準備して行きますわよ」
「はぁい」
サテラニ促されて、忘れ物が無いか確認した後部屋を出た。
★
チェリさんやムニと宿の入口で合流して街門から街壁の外に出た私達は、ミスティカの街から空飛ぶ絨毯に乗って5日程で魔王の住むエランテの街に到着した。夜は目に付いた村や街で泊まっていたので体調は万全。道中出て来た空飛ぶ魔物もこのメンバーで苦戦する訳もなく吹き散らして来た。
エランテの街門から100メートル程離れた所に絨毯を下ろして、ムニに収納してもらう。
そして特に作戦とかを話し合う事も無く、どんな時も気負わないムニとサテラの2人が街門に向けて歩き始めたので私とチェリさんはそれに続く。私はちょっとドキドキしてるけど。
街門の前までやってくると、ツノの生えた魔族の門兵2人が槍を交差させて行手を阻んだ。
「貴様達、何者だ!」
「魔王様に用があって来たんですけど」
私の発言に更に警戒を強める門兵。
「どんな用だ…まさか、勇者か!?」
「そう…なりますかね?」
「また勇者か!敵襲!!敵襲〜!!!」
驚く程の大きな声で門兵が叫び、更には街壁の上にある鐘が鳴り響いて街が俄かにざわついた感じが伝わってくる。
そして門兵が槍をコチラに向けて牽制してくる。
「面倒ね。魔王の所まで一気に突っ切りますわよ」
そうサテラが言ったその瞬間にムニとチェリさんが抜き放った武器で門兵達を叩き伏せた。目にも止まらぬ速さで門兵を倒した2人は一気に門を潜っていく。サテラもそれに続いて走り出したので私も遅れない様についていく。チェリさんも接近戦強いんだな。
走って門を抜け、エランテの街道を奥に見える城に向けて伸びている大通りを真っ直ぐ直進する。道中出てくる魔族兵をムニとチェリさんが千切っては投げながら、更に魔術が頻繁に飛んでくるけどそれぞれ避けたり斬ったり防いだりしながら道を進んでいく。
「今回の勇者達も強い!下級と中級は下がれ!!」
「負傷したものは救護班の所に!」
「前に出ます!魔術師団は援護を!」
そう言って前に出てきたガチガチに鎧を着込んだ兵士数人をサテラが衝撃波を前方に放って吹き飛ばした。一気に開いた道を私達は駆け抜ける。
「おいおい!強いなんてもんじゃないぞ!?」
「フェンド様はまだか!!」
「来ました!フェンド様!」
城門近くまでやってきた所で行く手を塞ぐ魔族兵達が割れて、奥から1人の魔族が歩いてくる。
「中々やるみたいですね。私は魔王直属の四天王が1人、フェンド。私の風で貴女達を細切れにして差し上げまゲフゥ!!?」
ムニが急接近してフェンドさんの鳩尾に刀の柄頭を撃ち込んだ。強烈な一撃だったらしくそのまま倒れてしまうフェンドさん。
「フェンド様ぁぁ!!?」
『よわっ』
「とっとと先に行きますわよ」
「喋ってたのに…」
泡吹いて倒れてるフェンドさんを放置して城壁門へ直進。門を抜けると広い庭に出た。大勢の魔族兵達が陣を組んで私達の行手を遮ってる。その中からめっちゃ筋肉が盛り上がった魔族の男が歩いてきた。
「くく、フェンドを倒した様だな。だが、あんな魔術バカを倒した程度で良い気になってもらっては困る。貴様達の名は何という?」
「…マコです」
『あたしはムニだ!』
「…」「…」
「其方の2人は残念ながら墓標に名を刻んでやる事が出来ないぞ?死んだ後に後悔するがいい。では…四天王第三席、剛力のカロンソ、推して参る!」
剛力さんが構えを取った。ムニとサテラが目を合わせて、何のやり取りがあったのかサテラが前に出た。
「うおおぉぉぉ!!」
サテラが軽く構えを取った瞬間に突撃してきた剛力さんが、威力の乗ったパンチをサテラの顔面目掛けて打ってきたのをサッと躱しざまに腕を取って、柔道の一本背負いな感じで地面に叩きつけた。背中を打って一瞬息が出来なくなった剛力さんの横腹にサテラの蹴りが炸裂、サッカーボールみたいに回転しながら横の魔族達の一団に突き刺さった。
「さっさと行きますわよ」
『おう!』
前方の敵をムニとチェリさんが退けながらガンガン進んでいく。周囲から襲いかかってくる魔族兵達はサテラが敵から奪い取った槍で無双していく。
そうしてやがて魔王城の大きな扉に辿り着いた。そこへ城の壁の上から矢が雨霰と降り注ぐ。1本の矢が私の黒曜豹のローブで弾かれたのにビックリして咄嗟にアトモスで矢を散らす。危なかった!
ムニは刀で弾き、サテラは何やら護符を宙に展開して自身に当たる筈だった矢を護符の力で逸らしている。チェリさんは結界を張って凌いでいるようだ。
『ほっ!はっ!…りゃあっ!』
隙を見て大上段の構えから刀を瞬速で振り下ろして、扉の真ん中を斬る。多分閂を斬ったのかな?更に前蹴りを扉に入れると勢いよく大扉が開いた。すかさず全員で城内に侵入する。
そこにもわんさか魔族兵がいた。相手するのが面倒なのでここは、
”大気の神よ 其の力を此処に 玉よ崩りて龍を象れ 咆哮よ彼方へ突き抜けよ 其の一撃は”
「●、ドラゴロアー!」
私の傍に出現した龍の咆哮で直線上の敵を吹き飛ばす。
「行きましょう」
「その魔術、中々便利ね」
空いた前方へ走っていくと中心が吹き抜けになったホールに出た。左手を見ると螺旋階段が上へ上へと続いている。そのだいぶ上の方から魔族が降って来て、中心に着地する寸前サテラが闇の雫をぶっ放してその魔族を向こうの壁まで吹き飛ばした。そのまま崩れ落ちる魔族さん。
「あの人何もしてない…」
「良いのよ」
「四天王さんでしょうかね?」
チェリさんが戦慄している。サテラが更に腕を振ると、私達4人が暗い光に包まれて身体が浮いた。
「飛びますわよ」
螺旋階段を無視してそのまま結構な速度で上昇していく。この階段にも魔族の兵士がいっぱい待ち構えてだんだろうな。
そのまま一気に登り詰め、螺旋階段の終点に辿り着いた。そこに大きな扉があったので開けて進むとそこは城の壁の外。凄い高さな上、足場は横幅2メートル程で手摺がない。高い所なのでまあまあな風も吹いている。なに?こんな所を魔族達は歩いてるの?
「これなら最初から飛んでくれば良かったですわね?もう一回飛びますわよ?」
再びサテラの暗い光に包まれて上昇。最上階に到達した。降り立って目の前の建物に入ると、厳かな雰囲気の広い部屋…奥に玉座があって、その玉座の前には1人の魔族が立っている。魔王?それとも四天王さんかな?多分4人目だし。
「貴方が魔王なのかしら?」
「私は四天王の最後の1人、ベルアだ」
「魔王はどこですか?」
「玉座の後ろにある魔術陣から転移した先に居る」
『通して貰おう!』
一気に接近したムニの刀とベルアの剣がぶつかる!激しい闘いを始めた2人だけど、その実力は互角…では無さそうで、ジリジリとムニが押し始める。更にそこへチェリさんの強化魔法が上乗せされて30秒と持たずにベルアの剣が弾かれ、ムニがベルアの心臓の位置目掛けた突きの姿勢でピタッと静止した。
両手を上げて降参の意をしめすベルア。
「…コレは敵わないな。またやけに強い勇者が来たものだ」
「通して貰っても良いですか?」
「あぁ、構わない」
そう言って横にズレたベルアを横切って玉座の後ろの魔術陣の上に4人で乗る…前にサテラが私達を制して魔術陣を調べ始めた。
「………そうね、危険は無いわ。これに乗ると異空間に転移するけど私なら出られるから問題無い。行きますわよ」
改めて4人で魔術陣に乗った。ブレる視界と共に浮遊感にとらわれる。気がついたらマダラ模様の空が広がる、果てが見えない空間に来ていた。
そして正面には大きなツノが頭に生え、肩幅の広い鎧とマントを纏って、紫色の長髪をなびかせた男が1人。
「よくぞここまで来た。ここは我が作り上げた異空間、何をしても壊れない遊戯場だ。貴様達の全てを打ち砕き、そしてここに来た事を後悔させてやろう。何か言い残す事はあるか?」
「宝石の付いた鍵、知りませんか?」
「は?鍵…?なんの話だ?」
「1年とちょっと前ぐらいに城のどこかに鍵が落ちてませんでしたか?」
「1年前と言えばまだ我の父が魔王をやっていた時期だ。知らぬ」
「その先代様にお目通り叶いませんか?」
「…我を倒すことができれば取次ごう」
「有難う御座います」
「では…勇者達よ。我は魔王エンペラム。この我に歯向かうという事がどういう事か、その目に焼き付けてくれよう!」
魔王がマントを翻し腰から剣を抜き放つ。更に周囲に纏った紫色をした魔力によって突如発生した無数の光弾が私達に襲いかかった。




